刊行物
生協総研レポートNo.99
『協同組合原則改定の議論をふりかえる/フランスとデンマークの協同思想より学ぶ─2つの公開研究会より─』
本号は、2022年度に開催された生協総研・公開研究会から、協同組合原則と協同組合史のひとこまを振り返る内容となった2回の報告をもとに、再構成したものです。
第1部は、「協同組合原則改定の議論をふりかえる」と題して、日本協同組合連携機構(JCA)と共催で7月15日に開催したものです。2021年12月に韓国・ソウルにおいて国際協同組合同盟(ICA)の第33回大会が、「協同組合のアイデンティティを深める」をテーマに開催されました。このソウル大会を契機として、協同組合原則についての議論が今後深まっていくと予想されます。そのため、現在適用されている1995年のICA大会における協同組合原則改訂の議論がどうであったのかを、当時、国際準備委員会の日本からの委員として深くかかわってこられた白石正彦氏(東京農業大学名誉教授)のお話を中心に、現在のICAにおける議論の状況を現在携わっておられる前田健喜氏(JCA)から、さらに1937年の原則決定時や1966年の改訂と日本での議論について拙所の鈴木が紹介したものです。
第2部では、フランス人のシャルル・フーリエ(1772-1837)の生誕250年、デンマークのN.F.S.グロンヴィ(1783-1872)の没後150年にあたるということで、彼らを「再発見」する内容として、12月8日に開催したものです。マルクスから「ユートピア主義者」と一括りにされた奇想家フーリエは、協同体や「魅力ある労働」、自由な性愛などを構想した思想家です。しかし、彼の思想は後継者たちが実践し、技術官僚にも一定の影響力を与え、「社会的連帯経済」の一源流にもなります。一方、青年に人間らしい生活を奮起させ、助長し、啓発することを目的としてデンマークで「国民高等学校」を実践したのがグロンヴィ(グルントウィーとも表記されます)です。農村に深く根をおろしたこの学校は、いまも「協同組合の国」といわれるデンマークでの精神的な支柱となりました。名を遺した先人たちを振り返ることは、今日の「協同」を考える上でも、豊かなヒントを含んでいるように思います。
ご一読いただけましたら幸いです。
主な目次
刊行にあたって(藤田 親継)
第1部 協同組合原則改定の議論をふりかえる
- 協同組合のアイデンティティをめぐる協議の動向(前田 健喜)
- 1995 年のICA 協同組合アイデンティティ声明案の策定、ICA 第2回総会採択のプロセスとその後の30 年をふり返って(白石 正彦)
- 協同組合原則と改訂の議論をふりかえる(鈴木 岳)
第2部 フランスとデンマークの協同思想より学ぶ
- シャルル・フーリエとフーリエ主義者、そして協同組合(鈴木 岳)
- 没後150 年のN.F.S. グロンヴィとデンマークにおける国民高等学校及び農業協同組合の持続可能な発展(白石 正彦)
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