「子ども・子育て支援新制度で利用者ニーズをどう具体化するか~日本の現状と諸外国の動向から~」報告
- ○ 開催日時
- 2014年11月6日(木) 13:30~16:30
- ○ 開催会場
- キャンパスプラザ京都4回第4講義室
- ○ 参 加 者
- 41名
- ○ 共 催
- くらしと協同の研究所
- ○ 協 賛
- 日本コープ共済生活協同組合連合会
プログラムと報告者
13:30 ~ 13:33 | 開会【挨拶と趣旨】 近本聡子(公益財団法人生協総合研究所) |
13:33 ~ 13:50 | 基調講演と編者解題【日本中心に】 池本美香((株)日本総合研究所) |
13:50 ~ 14:20 | 国際事例紹介【ノルウェー】 上掛利博(京都府立大学) |
14:20 ~ 14:50 | 国際事例紹介【フランス】 木下裕美子(大阪市立大学) |
14:50 ~ 15:00 | 国際事例紹介【韓国】 近本聡子 |
15:00 ~ 15:10 | 休憩 |
15:10 ~ 15:30 | 国際事例紹介【イタリア】 近本聡子 |
15:30 ~ 15:50 | 国際事例紹介【カナダ】 池本美香 |
15:50 ~ 16:10 | 国際事例紹介【アメリカ】 池本美香 |
16:10 ~ 16:30 | 質疑応答 |
概要
子ども・子育て関連三法が2015年度から本格実施となる。この新制度は、利用者ニーズをより実現しやすい仕組みを取り入れてはいるものの、利用者である子どもや親のニーズが、それぞれの現場でどの程度具体化されるか、その道筋は必ずしも明確ではないと考えられる。新制度には消費税から1兆円超の財源が確保されるはずであったが、そのうち7000億しか見込めずそれも不確かである。保育士不足も指摘されるなかで、どうやって「よりよい子どもの育ちと子育て」を実現するのか、各国の労働事情や保育の質の確保、利用者の参画がどのように保障されているのか、その具体的な政策と保育・労働の制度について日本と比較して考える機会にした。
昨年度、生協総研では幼児教育・保育の施設における親の協同・参画を促進しようと、この分野の先進12か国を対象に、保育の質や利用者の満足度を高める取り組みについて調査を実施し、『親が参画する保育を作る~国際比較調査をふまえて』として出版した。この著者が報告者となり、子ども・子育てに関わる全国の生協関係の方々、地域活動されている方々、そして研究者が一堂に会し、日本の未来を支える子ども達の育ちと親の子育てについて議論をすることができ、とても刺激の多い研究会であった。
公開研究会を終えて 親の協同研究会担当 近本聡子
● 子育て文化の違い
「子育てをどのようにするのか」は「人生をどう生きるのか」と同じくらい、自己決定と自分や家族時間の折り合いのつけかたが要求される。その各国の基本的違いがみられてとても興味深い。
第3回公開研究会報告を参照いただきたいが、ノルウェーや北米も屋外保育を重視していることが分かったことや、木下氏の取材されたフランス保育所、上掛氏の取材されたノルウェーの写真がまさに「百聞は一見にしかず」という情報量だった。フランスの親たちが積極的に保育所の環境整備をしている状況など興味深かった。
● 小さな協同を法人化しサポートする制度を
日本は「親の協同」をサポートする仕組みがあまりない。韓国のオリニジップのような5人から保育所を作れ子どもへの助成金が出る仕組みがあれば、もっと地域資源が豊富になるであろう。今回の韓国の事例ではあまり紹介できなかったが、現在「ソウルでもっとも住んでみたいエリア」であるソンミサンマウルでも協同社会づくりがまず保育所協同組合から始まったと聞いて、さもありなんと感じたものだ。
アメリカやカナダでは自発的な親の協同組合が数多くあり、政府補助もない中で運営されている場合もある。日本ではせっかく15年からの新制度において小規模保育所が対象となったので、是非また親たちの協同ができたら良いなあと思う。
● 保育士以外に地域の資格を
保育士や教諭資格だけでなく、カナダのファミリーエデュケーターやニュージーランドのプレイグループのコーディネーターのような多様な子どもや家族関連の資格が日本にも必要であろう。コミュニティを生成しているのは子育て期のサポートだと感じる。
詳細は『親が参画する保育を作る~国際比較調査をふまえて』(勁草書房)を参照いただきたい。