研究活動

「子ども・子育て支援新制度で利用者ニーズをどう具体化するか~日本の現状と諸外国の動向から~」報告

○ 開催日時
2014年10月30日(木) 13:30~16:30
○ 開催会場
明治大学グローバルフロント 1階ホール
○ 参 加 者
79名
○ 共     催
明治大学日欧社会的企業比較研究センター
○ 協     賛
日本コープ共済生活協同組合連合会
プログラムと報告者
13:30 ~ 13:33 開会【挨拶と趣旨】 近本聡子(公益財団法人生協総合研究所)
13:33 ~ 13:50 基調講演と編者解題 池本美香(㈱日本総合研究所)
13:50 ~ 14:10 国際事例紹介【オランダ】 太田和敬(文教大学) ★音声のみ
14:10 ~ 14:30 国際事例紹介【スウェーデン】 浅野由子(オレブロ大学客員研究員)
14:30 ~ 14:50 国際事例紹介【ドイツ】 佐久間裕之(玉川大学)
14:50 ~ 15:10 国際事例紹介【デンマーク】 永井暁子(日本女子大学)
15:10 ~ 15:20 休憩
15:20 ~ 15:50 国際事例紹介【ニュージーランド】 佐藤純子(淑徳大学短大)
15:50 ~ 16:10 国際事例紹介【イギリス】 池本美香((株)日本総合研究所)
16:10 ~ 16:30 質疑応答・まとめ
概要

 子ども・子育て関連三法が2015年度から本格実施となる。この新制度は、利用者ニーズをより実現しやすい仕組みを取り入れてはいるものの、利用者である子どもや親のニーズが、それぞれの現場でどの程度具体化されるか、その道筋は必ずしも明確ではないと考えられる。新制度には消費税から1兆円超の財源が確保されるはずであったが、そのうち7000億しか見込めずそれも不確かである。保育士不足も指摘されるなかで、どうやって「よりよい子どもの育ちと子育て」を実現するのか、各国の労働事情や保育の質の確保、利用者の参画がどのように保障されているのか、その具体的な政策と保育・労働の制度について日本と比較して考える機会にした。

 昨年度、生協総研では幼児教育・保育の施設における親の協同・参画を促進しようと、この分野の先進12か国を対象に、保育の質や利用者の満足度を高める取り組みについて調査を実施し、『親が参画する保育を作る~国際比較調査をふまえて』として出版した。この著者が報告者となり、子ども・子育てに関わる全国の生協関係の方々、地域活動されている方々、そして研究者が一堂に会し、日本の未来を支える子ども達の育ちと親の子育てについて議論をすることができ、とても刺激の多い研究会であった。

公開研究会を終えて 親の協同研究会担当 近本聡子
子育て文化の違い

 各国の比較でみえるのは、子育て文化がかなり異なることである。ドイツや北欧は天気には関係なく、極寒であっても、子どもは屋外で育てるほうが丈夫になるという思想がみえ、雪でも雨でも屋外に連れて行く。ひいては、ドイツの「森の幼稚園」のように建物はいらない、というタイプの保育所(教育所)もある。これは森を作る活動をしている生協や団体もできそうだね、という話をした。

労働政策の違い

 各国、子育て中の親には労働規制が有効に働いており、子どもを育てる時間、対話し、遊び、一緒に作業をするという時間を日本よりもはるかに長くとることができる。日本は男性稼ぎ手モデルが普遍化してしまったので、長時間労働が親たちにまでおよび労働が強いられ、子ども達は長時間保育にさらされるという状況だ。また、男女平等がいきわたり、ワークシェアによる短時間労働が一般的となっているのも子育てにはよりよい。とにかく労働規制と同一価値労働統一賃金(男女間や正規非正規間を主要な差異解消として)を早急に実現することが肝要と考えた。

保育士以外に地域の資格を

 保育士や教諭資格だけでなく、カナダのファミリーエデュケーターやニュージーランドのプレイグループのコーディネーターのような多様な子どもや家族関連の資格が日本にも必要であろう。コミュニティを生成しているのは子育て期のサポートだと感じる。

 詳細は『親が参画する保育を作る~国際比較調査をふまえて』(勁草書房)を参照いただきたい。