知の市場

第11回講義概要「貧困を考える」

○ 開催日時
2017年6月28日(水) 15:00~16:30
○ 開催会場
大東文化大学 板橋キャンパス(高島平)
講師とテーマ

 山田 浩史(日本生活協同組合連合会組織推進本部組合員活動部子育て支援担当)
 「貧困を考える」

概要

 今回は、「子どもの貧困問題と奨学金問題を考える」と題し、日本生協連組合員活動部の山田さんに講義をしていただきました。

 講義冒頭、学生たちへ質問が投げかけられました。「絶対的貧困と相対的貧困の違いを知っていましたか?」「貧困に陥っている子どもは、何人に一人くらいいるかご存知ですか?」。

 多くの人は、貧困と聞いて「飢餓」「ホームレス」「紛争」で苦しむ諸外国の子どもや「ストリートチルドレン」などの「絶対的貧困」をイメージします。ところが、今日の日本を含む先進諸国で問題となっている「貧困」は、社会の中で普通の暮らしを営むために必要な経済的条件が確保できない「相対的貧困」をさしています。「相対的貧困」は外から見えにくく、分かりにくいため、誤解されやすいという特徴があります。

 日本の貧困の現状は、高齢者・ひとり親家庭・若者世代と、多世代にわたって生じていますが、生協では、特に「子どもの貧困」に着目して取り組んでいます。「子どもの貧困」は、普通に学校に通っていて外見上は分かりにくく、家庭に勉強できる環境がなかったり、友達関係がつくりにくい、夜、ひとりぼっちで食事をしたり、親が病気を抱えていたりと、生きにくい多重の問題をかかえている場合が多いのです。

 生協では、子ども食堂、学習支援、フードバンク、フードドライブといった取り組みを通して、子供たちの居場所づくりを行っている。

 次に「奨学金問題」について、学生たちへ再度質問「奨学金を借りている大学生はどのくらいいるかご存知ですか?」。

 近年、世帯収入が減少傾向にある一方で、子どもにかかる教育費は増加傾向にあり、大学生の約半数が何らかの奨学金を利用していると言われている。また最近、奨学金をめぐって、返済が難しいために自己破産する、奨学金の返済があるために結婚をためらうなど、社会的な問題にもなっています。

 現在の奨学金制度と最近の動向について学び、生協が取り組んでいる奨学金問題の解決を求める署名、奨学金制度の見直し要望書の提出、「教育費や奨学金制度に関するアンケート」等の様々な活動について紹介しました。

 もし、奨学金の返済に困ったら、まずは借りているところに早めに連絡し、救済制度の利用などを求める。奨学金問題対策全国会議などに相談する。とにかく一人で悩まず、助けを求めることも大切。学生たちへ「奨学金問題はまだ解決していません。よりよい制度となるよう、引き続き声をあげていきましょう。」と呼びかけ講義を結びました。

受講生のレポートより

【Aさんの報告】貧困というと家族がいなかったり、家がなくその日生きることが精一杯という人々のことを指しているという風に思っていました。しかし、必ずしもそういう人たちだけでなく、平均的な生活レベルより著しく低い状態のことも指すことを初めて知りました。日々何不自由なく暮らすことができ、しっかりとした設備の整っている学校で教育を受けたり、学べたりしている私たちはとても幸せなことだということを改めて実感しました。同じ日本で満足に教育を受けることができない人たちのためにも学べることの大切さを十分に理解して残り少ない授業をしっかりと受けていきたいと思いました。また、将来日本の子供たち全員がしっかりと教育を受けることができ、学べる環境が増加する手伝いが自分に少しでもできるように、何か行動して行きたいと思いました。【Bさんの報告】子どもの貧困については、去年レポートの課題図書として読んだ本に書かれていて知りました。普段、貧困を目にすることがないから気づかないだけで、身近に苦しんでいる人がいると思うと心が痛んだ。自分も将来貧困に陥ることもあるかもしれないと不安にもなった。病気や精神的疾患で仕事ができなくなったり、所得が得られなくなったりしても誰にも助けを求められない状況になったとしても、周りに知られたくないと思ってしまう。しかし、私の知らないところで子ども食堂、学習支援、フードバンクなど、様々な取り組みが行われていて、これからもどんな取り組みがあるのか注目していこうと思った。【Cさんの報告】近年、地域のつながりが薄くなってきており、そのことが貧困家庭の子どもの状況を悪化させていることを本日の講義を受け再確認させられました。そのため地域のつながりや助け合いを増やす団体の活動(学習支援や交流イベント)はなくてはならない存在で、もっと増やすべきであると考えました。また、私は貧困家庭の子どもの学習支援をする団体でボランティアをしたことがありますが、やはり学力も低下しがちで生協も取り組んでいる学習支援はとても重要な活動であり日本の将来の投資としてこのような支援を行い、子どもの貧困や学力低下の解消をしていかなければならないと感じました。私も一人親家庭で、どちらかと言えば貧困家庭であり、さみしい思いやむなしい思いを何度もしてきたため、本日の講義を受けて、子どもの居場所をつくってくれる支援を自分も子どものときに受けたかったと思いました。また、奨学金を借りる大学生は2人に1人いることを知り、そんなにいるのかと驚きました。大学に通うのに、勉強するのにこんなにお金がかかるなんておかしいと思うし、学びたくても学べなかった貧困家庭の若者もたくさんいるだろうなと思い、自分がこうして学びたいことを学べる環境を与えてもらったことに感謝しなければならないと感じました。生協が取り組んでいる奨学金問題の解決を求める署名などに参加し自分もこの問題に声を上げたいと思いました。