第10回講義概要「エネルギーを考える」
- ○ 開催日時
- 2017年6月21日(水) 15:00~16:30
- ○ 開催会場
- 大東文化大学 板橋キャンパス(高島平)
講師とテーマ
髙橋 怜一(株式会社地球クラブ 事業部長)
「エネルギーを考える」
概要
東日本大震災に伴い発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故は、大量の放射性物質の漏出により10万人を超える福島県民が避難生活を強いられるとともに、食品や水、土壌や海洋汚染などへの放射能汚染が広い範囲に広がるなど、甚大な被害をもたらしました。生協は、組合員の声に根差し、原子力発電に頼らない、省エネルギーの推進と再生可能エネルギーの普及に取り組んでいます。
今回の講師は、(株) 地球クラブの髙橋さん。地球クラブは日本生協連が原子力発電に頼らず再生可能エネルギーの利用を拡大していくことを目的に2014年6月20日に設立した電気事業者です。再生可能エネルギーを ‘創って’、‘使って’、‘広げていく’を目指しています。髙橋さんは、会社設立当時の苦労話を交えながら、学生たちの家庭のエネルギーが今どのようにつくられているか。電気のつくり方(発電方法)による、安全性、コスト、環境影響を比較しながら、それぞれにどのような問題点があるのか。再生エネルギーとはどういうものか。そして電力自由化とは一体どういった仕組みになっているのかを解説して行きました。
続いて、具体的な発電事業の紹介。野田バイオマス発電所は、岩手県北東部の太平洋に面した野田村に、日本紙パルプ商事(株)が主体となって、日本生協連、いわて生協、みやぎ生協、コープ東北サンネット事業連合が一部出資参画して建設しました。野田村は、東日本大震災の津波被害により幾人もの尊い命が失われ、漁業・商工業も甚大な被害を被りました。震災復興が進んでいますが、今なお人口の流出が続いています。発電所は、それまで廃棄物として処分されていた木材チップや樹皮などを森林組合の協力により燃料に利用しています。発電所の稼働によって雇用創出や地元林業の活性化に貢献しています。そのほかに物流施設や店舗での太陽光発電などの取り組みが紹介されました。
このようにしてつくられた再生可能エネルギーは、市場調達と電力会社の補給とで構成して生協の店舗や事業所346施設へ安定供給しています。そして今秋(2017年)から、東京・千葉・埼玉、宮城の生協で組合員へ電気の供給がスタートします。電力自由化によって、わたしたち消費者は、電気を選べるようになりました。生協では、CO2の排出量が少なく再生可能エネルギーの構成比率の高い電気の供給を行うとともに、消費者が電気を選べるように「電源構成情報開示の義務化」を求める活動を進めています。消費者一人ひとりの声は小さいけれども、これからの私たちの選択が日本のエネルギー政策に反映されて行くことになります。