知の市場

第3回講義概要「学生生活を取り巻くリスク」

○ 開催日時
2017年4月26日(水)15:00~16:30
○ 開催会場
大東文化大学 板橋キャンパス(高島平)
講師とテーマ

 寺尾 善喜(全国大学生協共済生活協同組合連合会 専務理事)
 「学生生活を取り巻くリスク」

概要

 第3回講義は、大学生協共済連の寺尾さんです。大学生協共済連は、学生どうしがお互いに助け合う、学生のための共済を事業とする団体です。事業を通して見えてくる学生生活に潜む思わぬリスク。PKT(ペチャクチャタイム=学生どうしが話し合う時間)をはさみながら大学生協共済連の取り組みについて講義していただきました。

 「共済」と「保険」は、似ているようで、そもそも根拠となる法律が違います。「共済」は、組合員があらかじめ一定の「共済掛金」(加入)を出しあい、万一のときに「お見舞金」(給付)により経済的な損失を補う相互扶助(助け合い)の仕組み。大学生協共済連では、経済的な保障に留まらず「学生をリスク弱者にしない」ための予防型活動を積極的に行っている。

 大学生協共済連の事業報告(給付件数)の数値を5倍すれば、おおむね全学生の傾向が把握できるといわれている。講義は、学生の誰もが身近に感じるような事例が取り上げられました。自転車事故、不適切な飲酒、軽井沢スキーバス事故、メンタルヘルス、デジタルタトゥ、一人暮らし...。

 自転車事故は、バイクのようにエンジンがないから危険でないと思われがちですが、学生の事故による後遺障害の5人に1人(19.26%)が自転車運転中の事故。自転車事故は、自身の生命を脅かすと同時に、加害者になるリスクもある。実際に1千万円の賠償事故が1年間に3件発生し、自転車の二人乗り事故では1億円を超える賠償事故も発生している。事故に伴う示談交渉は学業にも影響してくる。また、自転車運転中の「ナガラ運転」や「傘差し運転」などの交通違反をしていないだろうか。交通法規に違反する運転行為は、単に講習の義務が生じるとか、罰則があるということではなく、そのような行為が自身の命を脅かし、さらには加害者にもなりかねない。刑事責任に問われ実刑判決が出れば、就活そのものが難しくなる。

 各PKTは、こうした様々な事例紹介を挟みながら寺尾さんから学生へ次のような問いかけで始まりました。「Xさんが自転車で下校途中、友達のYさんが徒歩で下校していたので、善意で後部座席に乗せてあげた。ところが、きつい坂道で運転を誤って壁に激突。乗せてあげたYさんのほうが重傷を負ってしまった...。」「自転車を運転していたZさんは、信号のない交差点を直進しようとして、左側から来た車と接触して転倒、ケガをするとともに自分の自転車は壊れてしまいました。相手の車にも傷がついたのですが、Zさんは相手の車の修理代を請求される、されない?」不適切な飲酒のPKTでは、「ひやりはっとするような飲酒の問題を身近に感じたことや見聞きしたことは?自分事に引き寄せて考えた場合に何ができるだろうか。」メンタルヘルスの問題では、「学生生活無料健康相談テレホン」に寄せられた相談事例があげられ、PKTでは「アルバイトでブラックな印象を感じた事例などありませんか?」などが話し合われました。

受講生のレポートより

【Aさんの報告】学年があがるにつれてハメを外しやすくなると思うので、このタイミングで学生生活に潜む危険について学べて良かったと思います。大学に入学して間もない時期も危険だと思うので1年生にもよく知っておいてほしいと思いました。大東大生は意外と大きな問題(トラブル)を起こすことが少ないので、マナーやモラルは良い方なのではないかと個人的には感じています。学内の障がい学生支援に携わっているので、精神障がいをもつ学生の自殺率が15.3%であることが気になりました。「就活に支障が生じる」というところでは、就活のために心がける、ということではなく「人として」心がけていくべきだと感じました。【Bさんの報告】 今回の講義は、自分の意見を出し周りの人と話し合えて楽しかったです。友達を自転車に乗せて事故を起こしてしまった人についてどう思うかという問いに対して、やはり責任感は友達ゆえに相当大きいと思います。また、メンタルヘルスについては、自分事としてイメージできるかということについて話し合ったところ、バイト先や就職活動、家族のことなど考えることが多いので、重度になるかは別としても、皆が少なからず気にしているということでした。私の場合は、今4年生なので就職活動で毎日忙しいので、そういう面でメンタル的につらいことなどが多いということを話しました。【Cさんの報告】今回の講義は、初めから最後まで常に身近な話ばかりでとても考えさせられました。傘を差したままの自転車運転は普段の登下校中に見かけます。イヤホンをしている人も何度か見たことがあります。少なくとも目の前でその人たちが事故にあったりということはありませんでしたが、それがどれほど危険かということを実際の事例や賠償の金額を知ることで改めて痛感されられました。お酒に関しては、自分は違うから、知り合いは違うから。ということではなく、いつ誰が巻き込まれるか分からないのだということを理解し、第一に自分が巻き込む側になるようなことは決してないようにしなければならないと思いました。講義でも出た言葉ですが「想像力」をしっかり持つことが何よりも大切なのだと考えます。