- ○ 開催日時
- 2015年7月1日(水) 15:00~16:30
- ○ 開催会場
- 大東文化大学 板橋キャンパス(高島平)
講師とテーマ
志波 早苗(生活サポート生協)
「貧困を考える」
概要
第11回「生協社会論」は、生活サポート生協の志波早苗さんが、「貧困を考える」をテーマに講義をしました。
冒頭、「これはどこの国」という昭和30年代の写真が映し出された。栄養失調の子どもの脚、合成洗剤で泡だらけになった多摩川など。豊かで、衛生的な社会になった日本も、50年ほど前は貧しく、公害などの問題を抱えていたことを学生に訴えました。
今、再び日本でも格差の拡大や高齢者、子どもの貧困が問題になっています。では、貧困とはどういう状態を言うのか、志波さんは学生たちに問いかけました。貧しいこと、お金がないことなどの答えが返ってきましたが、貧乏であることに加え、孤立していることが貧困だという、貧困ネットワークの元事務局長、湯浅誠さんの定義を紹介しました。
今の日本は、少子高齢化や産業の空洞化など様々な問題を抱え、非正規雇用の増加で雇用が不安定になり、若者の引きこもりや自殺者数が高止まりしている。OECD加盟諸国の中で、日本の相対的貧困率は高く、世帯別生活意識調査の年次推移を見ても、生活が苦しいという人の割合が増えていることなどを示し、貧困が決して他人事ではないことを説明しました。
志波さんが事務局長をしている生活サポート生協は「くらしの相談ダイヤル」という生協組合員からの相談事業を行っています。生協の組合員は一般消費者より所得が高く、自身も中流を考えている人が多いが、相談内容はそれぞれの時代を映しているという。現在の相談内容を要約すると、生活困窮相談、高齢・介護、育児など日常生活が営めないという相談、生活力がないために日常生活が営めないことの相談の3つに大別できるそうです。
志波さんは、講義の中で、ご飯がお鍋で炊けるか、葉付き大根の料理をいくつ知っているか、隣、近所の人の名前を何人言えるかという質問を受講生にしました。こうした生活力が厳しい時代環境の中で、生きていく力になることを学生たちに訴えました。そして、貧困を個人の責任と片付けずに、「生活に困難を抱えている人でもくらしやすい社会は、誰にとっても生きやすい社会だと思いませんか?」と問いかけて、講義を終わりました。
これから社会に出ていく学生たちは、志波さんの問いかけをどう受け止めたでしょうか?