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生活協同組合研究 2022年11月号 Vol.562

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飲用水をとりまく状況

 人間の体の多くは水分でできている。新生児で75%,成人で6割、高齢者でも5割は水分である。それだけ、水分を補給することが誰しも健康と生命の維持に必須ということである。しかし、日々口に入る水についてはあまりに身近な故に、盲点になっているのではないか。
 以前に水特集を組んだことはあるが(「水─国際水協力年を記念して」2013年2月号)、今回は、特に直接間接に飲用する水というものに絞り込んだ。飲用水をめぐり、日本を主として現況と課題・問題を総合的により理解しようというのが、本特集の骨子である。

 水道水を供給する側の状況がどうなっており、どのように変化し、どのような問題が表出しているのかということが、前半の3つの論考である。つまり、2018年の水道法改正と千葉県を例とした水道事業の広域化について、世界的な水道事業の公営化から民営化(さらに再公営化)の状況と日本について、日本の水道水の安全性に関するさまざまな懸念について、という角度からの論考となる。

 中盤では、水源からの論点である。地域によっては水道水とも重なる部分はあるものの、昔から広範に利用されている地下水についてと、技術革新によって新たに存在感を示してきている海洋深層水について、それぞれの論考で紹介・整理されている。加えて、天然炭酸水のコラムを入れた。

 後半にインタビューとして、「みやぎ生協アクアクララ」と「水Do! とRefill Japanの展開」の2つを掲載している。安全性に十分すぎるほど留意したおいしい水の宅配での提供に努力される前者と、誰でも無料で利用可能な水道水の給水スポットに焦点を当てるとりくみである。真逆な一方、廃棄物の問題意識については類似性も感じられる。

 それぞれの論点に対して、さまざまな見方や評価があろう。関心のある所から読んでいただくのもよいと思う。とまれ、くらしの根幹を支える水についての関心を惹起できれば、喜ばしいところである。

(鈴木 岳)

主な執筆者:梶原健嗣、内田聖子、山室真澄、中川 啓、高橋正征、山内治郎、白石正文、瀬口亮子、鈴木 岳

目次

巻頭言
有機・アニマルウェルフェア畜産における産業化と可視化(大木 茂)
特集 飲用水をとりまく状況
改正水道法によって始まる水道事業の再編 ─広域化の問題を中心に─(梶原健嗣)
水ビジネスと民営化の問題点(内田聖子)
日本の水道水は安全か?(山室真澄)
地下水の特性と利用,および課題(中川 啓)
飲料水としての海洋深層水利用の現状と展望(高橋正征)
アクアクララみやぎ生協の水宅配事業について(山内治郎・白石正文〈聞き手:鈴木 岳〉)
「給水スポット」で環境負荷の低減と魅力的なまちづくりへ
 ─水Do!とRefill Japanの展開─(瀬口亮子〈聞き手:鈴木 岳〉)
コラム 日本にもある天然炭酸水(鈴木 岳)
研究と調査
特定地域づくり事業協同組合制度の可能性と課題(森谷久子)
国際協同組合運動史(第8回)
国際協同組合同盟(ICA)第5回マンチェスター大会(鈴木 岳)
本誌特集を読んで(2022・9)
(米山高生・安藤信雄・岡本一朗)
研究所日誌
公開研究会(オンライン) フランスとデンマークの協同思想より学ぶ(12/8)
2022年度生協総研賞・第20回助成事業対象者決定のお知らせ