生活協同組合研究 2022年8月号 Vol.559
食品表示制度の現在地~よりよい食品表示に向けた課題を探る
食品衛生法・JAS 法・健康増進法の食品の表示に係る規定を一元化した食品表示法が2015年4月1日に施行され、消費者にも事業者にもわかりやすい食品表示制度が目指されているはずだが、現状は果たして制度開始時の狙い通りになっているのか。本誌が食品表示を特集テーマにとり上げたことは近年なかったが、食品表示に関わるルールの見直しが相次ぐ中、「現在地」を一度確認してみることとした。
森田満樹氏には、食品表示法施行以降の動向を中心に食品表示制度の現状と課題を消費者の視点から俯瞰的にまとめていただくとともに、食品リコール情報報告制度、食品添加物の不使用表示に関するガイドライン、ゲノム編集技術応用食品の情報提供に関する状況説明も加えていただいた。
受田浩之氏には、消費者委員会食品表示部会での議論の結果取りまとめられた「食品表示の全体像に関する報告書」の内容や同報告書で提言された調査の実施結果などについて紹介いただいた。
鬼武一夫氏には、食品表示に関する行政施策と日本生協連の対応、食品表示一元化検討会や消費者委員会食品表示部会での対応などを中川英紀氏によるインタビュー形式でふり返り、食品表示をめぐる今後の課題についても見解を述べていただいた。
中村啓一氏には、食品の産地表示義務化の経緯、国内で作られたすべての加工食品を対象とする原料原産地表示の義務化の結果として多くの問題が表面化している状況を説明いただいた。
立川雅司氏には、2023年4月1日から施行される遺伝子組換えに関する任意表示制度改訂の内容・検討経過・背景、科学的検証の位置づけ強化などについて解説いただいた。
畝山智香子氏には、健康への効果を表示・宣伝して販売されている「健康食品」のリスク、健康被害が報告されていても(医薬品と違って)健康食品の規制が困難な現状などから、「食品の健康効果表示は消費者の健康と福祉の向上に貢献してきたか」否かを考察いただいた。
食品表示制度が抱える課題は多岐にわたり、より多くの関係者が良しとする解決策を見出すことは容易ではないと思うが、制度本来の目的に立ち返って不断の見直しが行われることを期待したい。
(中村 良光)
主な執筆者:森田満樹、受田浩之、鬼武一夫、中川英紀、中村啓一、立川雅司、畝山智香子
目次
- 巻頭言
- 新型コロナ禍で進んだテレワークと生活への影響(天野晴子)
- 特集 食品表示制度の現在地~よりよい食品表示に向けた課題を探る
- 食品表示制度の現在地 ─近年の動向も踏まえて─(森田満樹)
- 「食品表示の全体像に関する報告書」が目指す食品表示制度の実現に向けて(受田浩之)
- 食品表示制度のこれまでと日本生協連の対応(鬼武一夫・中川英紀)
- 原料原産地表示義務化の現状と課題(中村啓一)
- 遺伝子組換え食品の表示制度の改訂と課題(立川雅司)
- 食品の健康効果表示は消費者の健康と福祉の向上に貢献してきたか(畝山智香子)
- 研究と調査
- “協同”を基盤とする組織形態の多様性とその展望 ─共同売店の経営分析を中心に─(小正貴大)
- 国際協同組合運動史(第5回)
- 国際協同組合同盟(ICA)第2回パリ大会②(鈴木 岳)
- 本誌特集を読んで(2022・6)
- (西村一郎・河村真紀子)
- 新刊紹介
- 鳥羽田継之 著『なぜ信用金庫は生き残るのか』(谷川孝美)
- 饗庭伸 著『都市の問診』(三浦一浩)
- 研究所日誌
- アジア生協協力基金活動報告会(8/26)
- 公開研究会 健康になれる社会のしくみづくりに向けて(9/28)
- 全国研究集会 地域における多様な「協同」の形を考える(仮題)(11/5)