生活協同組合研究 2022年1月号 Vol.552
ポストコロナ時代における生協の役割を考える
──新型コロナウイルス感染症禍は生協に何を問いかけたのか──
本号は、2021年11月2日に開催した第30回全国研究集会の模様を収めたものである。新型コロナウイルスの感染拡大は、生活協同組合に大きな試練を投げかけた。2020年4月に発出された「緊急事態宣言」以降、生協への加入や注文が大幅に増加し、地域の食を支えるインフラとしての責任をどのように果たしていくのかが問われた。また、対面接触の抑制により、組合員と組合員、組合員と地域住民がつながることが困難になり、相互扶助の組織である生協の存在意義が問われることとなった。
さらに、新型コロナウイルス感染拡大は、かねてより進行していた格差、貧困といった問題を深刻化させた。コロナ禍の経済情勢の変化は、人々の所得に大きな影響を与えたが、甚大な影響を受けた人がいる一方で、ほとんど影響を受けていない人もいる。コロナの影響は一様ではなく、人々の立場によって大きく異なり、それゆえに人々の当事者意識や連帯意識が育まれにくく、孤立の問題も深刻化している。
このような状況の中で開催した今回の全国研究集会では、新型コロナウイルス感染拡大という危機が日本社会にもたらした課題や、ポストコロナ時代の社会像について考えることを目的とした。さらに、そういった日本社会の課題の解決に、生協はどう貢献していけるのかについて議論することも目的とした。基調講演に、神野直彦氏(東京大学名誉教授、生協総合研究所顧問)と石田光規氏(早稲田大学教授)を迎え、今後目指すべき社会のビジョンや、そこに果たす生協の使命について、非常に示唆に富むご講演をいただいた。
本号の内容が、コロナ禍の社会課題に対する理解を深め、より良い社会の実現に向けた具体策を議論するきっかけとなれば、大変幸いである。
(中村由香)
全国研究集会の第2部のプログラムでは、日本生活協同組合連合会が2021年6~7月に実施した「全国生協組合員意識調査」の結果を用いて報告を行っている。本調査は、生協総合研究所が日本生活協同組合連合会から委託を受けて実施しており、今回、特別に許可を得て、報告に使用させていただいた。ちなみに、この調査の結果は、日本生活協同組合連合会HPでも公開されている(https://jccu.coop/info/newsrelease/2021/20211124_01.html)。
なお、本誌2022年2月号でも「全国生協組合員意識調査」の特集を組む予定である。併せてご覧いただきたい。
主な執筆者:中嶋康博、神野直彦、石田光規、中村由香、宮﨑達郎、山崎由希子、藤田親継
目次
- 巻頭言
- 「協同組合のアイデンティティ」を深める1年に!…(藤田親継)
- 特集 ポストコロナ時代における生協の役割を考える
──新型コロナウイルス感染症禍は生協に何を問いかけたのか── - 開会の挨拶(中嶋康博)
- 危機を越えて人間主体の社会を再創造する──人間の未来を取り戻すために──(神野直彦)
- 地域のつながりの現状と課題(石田光規)
- 第1部 質疑応答(山崎由希子・神野直彦・石田光規)
- 組合員の暮らし方・働き方と生協利用(中村由香)
- 組合員の生活様式の変化と生協の利用状況・イメージ
──日本生活協同組合連合会「全国生協組合員意識調査」の結果から──(宮﨑達郎) - 第2部 質疑応答(山崎由希子・中村由香・宮﨑達郎)
- 閉会の挨拶(藤田親継)
- 本誌特集を読んで(2021・11)
- (竹内明子・竹野ユキコ)
- 新刊紹介
- 石田正昭編著『いのち・地域を未来につなぐこれからの協同組合間連携』(三浦一浩)
- 田口一成『9割の社会問題はビジネスで解決できる』(山崎由希子)
- 研究所日誌
- 公開研究会 生協共済の未来へのチャレンジ(2022.1.17)
- 公開研究会 エネルギーから地域ガバナンスを考える(2022.2.17)