生活協同組合研究 2021年11月号 Vol.550
メンタルヘルスと対策をめぐって──新型コロナウイルスの渦中で──
「メンタルヘルス」(心の健康)とは、近年、身近になったことばのひとつのように思う。
いわく、メンタルヘルスケア、メンタルヘルスセルフケア、メンタルヘルスマネジメント……。職場では企業に求められる安全衛生として、メンタルヘルス学習の機会も設けられるようになってきている。実際、休職などの話も時々耳にする。COVID-19(新型コロナ感染症)の蔓延以降、より厳しい状況もいわれるところである。
しかし、例えばウェブ上でのアンケートによる診断など、どのような意味があるのか、素人にはわかりかねるところも多い。そもそもメンタルヘルスとは何か。厚生労働省のウェブサイトには「知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス」があり、こころの病気について理解を深めようとして「こころの病気は、誰でもかかりうる病気です」「こころの病気は回復しうる病気です」「こころの病気を正しく理解しましょう」とある。ということは、理解していないのは愚生だけではないようである。このテーマについて取り組む背景となった。
データはかなり以前のものだが、公益社団法人日本精神神経学会のウェブサイトによれば、「患者調査によると、1999年の精神疾患の推計患者数は、1999年には外来170.0万人、入院34.1万人でしたが、2008年には外来290.0万人、入院33.3万人と、外来・入院の合計で1.6倍に増加しており、国民の40人に1人は精神疾患の治療のために医療機関を利用している」。「世界精神保健調査によると、日本における成人の気分障害、不安障害、衝動制御障害、物質関連障害のいずれかの生涯有病率は24.2%、12か月有病率は10.0%でした。世界精神保健調査に含まれていない統合失調症、認知症などを含めると、日本における精神疾患の有病率はさらに高くなると思われます。」ということである。
今回、それぞれ一線の専門家の方々から内容の濃い論考を集約することができた。若干の重複はあろうが、そこは逆にポイント部分とみて、肯定的にお読みいただければと思う。この特集が、何らかの気づきになれば幸いである。
(鈴木 岳)
主な執筆者:阿部浩之、江口 尚、種市康太郎、北岡大介、池田真典
目次
- 巻頭言
- 食料システム変革への協同組合の役割(白石正彦)
- 特集 メンタルヘルスと対策をめぐって──新型コロナウイルスの渦中で──
- メンタルヘルスを理解するために(阿部浩之)
- 職場とメンタルヘルスの課題(江口 尚)
- コロナ禍の職場のメンタルヘルス対策(種市康太郎)
- コロナ禍におけるテレワークと職場のメンタルヘルスに関する法的課題(北岡大介)
- 「生活者」から見たわが国における精神保健医療福祉改革(池田真典)
- 研究と調査
- 大規模災害と共済協同組合に求められる役割──4つの共済組織の比較を通して──(門山晃士)
- 本誌特集を読んで(2021・9)
- (高浦美穂)
- 寄稿
- 『日本の生協運動の歩み』発刊に関連して──歴史と歴史編纂について──(斎藤嘉璋)
- 新刊紹介
- 生協共済研究会編『生協共済の未来へのチャレンジ』(武田俊裕)
- 野原敏雄著『友愛協同論』(鈴木 岳)
- 研究所日誌
- 公開研究会 英国初期の協同構想と論争から学ぶ(2021.12.21)
- 公開研究会 生協共済の未来へのチャレンジ(2022.1.17)
- 2021年度生協総研賞・第19回助成事業対象者決定のお知らせ
- 生協総研賞第13回「表彰事業」受賞式のご案内