生活協同組合研究 2021年5月号 Vol.544
健康でありたいという願いによりそって
生協総合研究所「人生100年時代における健康づくり研究会」は、2020年3月、問題提起「健康でありたいという願いによりそって~広げる、つなげる、生協ならではの健康づくり」(以下、「問題提起」)を取りまとめた。本特集のテーマはこれに由来しており、SDH(健康の社会的決定要因)、ヘルスリテラシー、行動変容、食と健康に関連した論稿を揃えている。
近藤克則氏には、健康格差が生まれるメカニズムを検討し、「原因の原因」である社会環境をかえることで、暮らしているだけで健康になる人を増やす「ゼロ次予防」の可能性と、生協なら取り組める具体例を提示いただいた。
中山和弘氏には、定義が必ずしも明確でないままにネット上でヘルスリテラシーについての書き込みや記事が次第に増えている現状に鑑み、その概念の持つ意味をとくに意思決定の視点から説明いただいた。
横山啓太郎氏には、大学病院で初めて行動変容外来を開設するに至った課題意識の紹介に続き、老化についての考え方と行動変容に必要なマインドセットについて紹介いただいた。
中村育子氏には、在宅患者に訪問栄養食事指導を行ってきた長年の経験から、在宅高齢者が置かれている環境、買い物の可否・調理技術のレベル・コミュニケーション手段と在宅高齢者の栄養状態などについて解説いただいた。
問題提起そのものについては、研究会メンバー4名による座談会で、議論の幾つかのポイント(生協の「健康づくり」における健康観、社会的なつながりと健康、コロナ禍で浮き彫りになった課題、生活習慣としての減塩と社会全体で減塩に取り組むためのしくみづくり)を提示させていただいた。
さらに、事例から問題提起を補強すべく、西弘美氏には行政と医療・保健・福祉との連携のための会議や民間組織との連携による運動教室および「認知症になりにくいまちづくり」など、三浦雅子氏には短命県返上に向けた青森県での「健康づくり」における地域連携と担い手育成、前田かおり氏にはCO・OP共済健康づくり支援企画からみた「健康づくり」の優れた取り組みの10のポイントと今後の課題について、それぞれ紹介いただいた。
本特集が生協の「健康づくり」のさらなる発展に資することを、願ってやまない。
(中村 良光)
主な執筆者:近藤克則、中山和弘、横山啓太郎、中村育子、山内明子、馬場康彰、二村睦子、前田かおり
目次
- 巻頭言
- 多様な価値観と相対主義という罠~ポピュリズムについて考える~(米山高生)
- 特集 健康でありたいという願いによりそって
- 健康格差の縮小に向けたゼロ次予防(近藤克則)
- ヘルスリテラシーをめぐる日本の状況とコロナ禍における必要性(中山和弘)
- 人生100年時代の行動変容外来─生活改善につなげるための行動変容─(横山啓太郎)
- 人生100年時代の食と健康─在宅高齢者の食支援から考える─(中村育子)
- 座談会〈つながりづくり〉は〈健康づくり〉─格差の縮小に向けて,生協の強みを生かした取り組みに─
(山内明子・馬場康彰・二村睦子・前田かおり・茂垣達也(司会)) - 参考資料 研究会「問題提起」の概要(中村良光)
- コラム1 「健康づくり」活動を幅広く効果的に展開するための地域連携の在り方(西 弘美)
- コラム2 短命県返上に向けた「健康づくり」における地域連携と担い手育成(三浦雅子)
- コラム3 健康づくりの取り組みの水平展開に向けて─CO・OP共済健康づくり支援企画からみる優れた取り組みのポイント─(前田かおり)
- 本誌特集を読んで(2021・3)
- (佐藤憲司・伊藤剛寛)
- 新刊案内
- 渡辺 峻著『生協組織のマネジメント』(安藤信雄)
- 小関隆志編『信用生協 五十年史』(上田 正)
- 『握手 横関武さんを偲ぶ』(鈴木 岳)
- 私の愛蔵書
- 『三原脩の昭和三十五年』(鈴木 岳)
- 研究所日誌
- 2021年度開催公開研究会(5月~6月)
- 〈刊行案内〉『生協総研レポート』No.95(2021年3月刊)