生活協同組合研究 2021年4月号 Vol.543
労働者協同組合を学ぶ
労働者協同組合に関係する人々にとって長年の念願であった「労働者協同組合法」が、ついに昨年12月に可決された。協同組合陣営にとっても、自らの存在の多様性を再認識する契機となることであろう。
かの1980年レイドロー報告以来、日本でも明確に意識されるようになった労協については、生協総研でも関心を持ち続けており、例えば、本誌2013年5月号で労働者協同組合に関する特集を組んでいる。
さて当研究所では、昨年10月15日「「労働者協同組合」を学ぶ」と12月25日「「労働者協同組合」を学ぶ(国際編)」の2回のオンライン公開研究会で、つごう7氏の専門家から時宜を得た報告をいただいた。これらの内容を追加更新しつつ、文章化をお願いしたものが本号の特集である。
前半の3つは、日本編である。
富沢賢治氏は、戦後以降の労協の変遷と転機などを包括的に示している。
白井和宏氏は、生活クラブでのワーカーズコレクティブの状況と、労働の諸課題等を提示している。
相良孝雄氏は、労協や労協法成立の社会的意義を捉えつつ、協同労働の可能性を論じている。
後半の4つは、国際編である。
鈴木岳は、フランスから始まった労協について理論と実践を史的に紹介する。
田中夏子氏は、イタリアの労協の概要からWBO や社会的協同組合など多様な事例を提示している。
高橋巌氏は、スペインの労協がモンドラゴン以外にもカタロニア等で多様に存在するという豊富な事例を紹介している。
丸山茂樹氏は、揺籃期にある韓国の労協と社会的連帯経済、2012年施行の協同組合基本法を紹介された。
本号、労働者協同組合を知るうえでの基礎資料として、多くの方々にお読みいただければと願う。また後になって、何か関連で気になったときに読み返していただけるか、これも秘かに期待している。
(鈴木 岳)
主な執筆者:富沢賢治、白井和宏、相良孝雄、鈴木岳、田中夏子、高橋巌、丸山茂樹
目次
- 巻頭言
- 東日本大震災から10年目を迎えて─災害支援と生協が果たす役割─(和田寿昭)
- 特集 労働者協同組合を学ぶ
- 労働者協同組合とは何か─歴史から学ぶ─(富沢賢治)
- ワーカーズ・コレクティブの課題と可能性─ディーセント・ワークとワーク・ライフバランスを目指して─(白井和宏)
- 協同労働が協同を価値とする社会デザインを切り拓く─ワーカーズコープの現局面と労働者協同組合法─(相良孝雄)
- フランスから始まった労働者協同組合(鈴木 岳)
- イタリアの労働者協同組合─社会的協同組合,労働者による企業再生,コミュニティ協同組合への展開を視野に─(田中夏子)
- スペインの労働者協同組合(高橋 巌)
- 韓国の新たな労働者協同組合(丸山茂樹)
- 本誌特集を読んで(2021・2)
- (馬場康彰・白水忠隆)
- 研究所日誌
- 公開研究会「各国における新型コロナウイルスと生協の対応」(4/28)
- 公開研究会「食品ロス・食品廃棄物削減」(5/19)
- 食習慣チェック(BDHQ_Webシステム)新機能のご案内
- 生協総研ウェブサイトに「調査データ」ページを新設
- 刊行案内『生協総研レポート「各国における新型コロナウイルスと生協の対応」』
- 刊行案内『ロバアト・オウエン協会 年報45』
- 『生活協同組合研究』総目次 2020年6月号~ 2021年3月号