生活協同組合研究 2021年3月号 Vol.542
食品ロス・食品廃棄物削減
節分の時期に食べられる恵方巻は食品ロス(食べられるのに廃棄される食品)の代名詞のようになっている。恵方巻は20年ほど前からコンビニやスーパーの販促キャンペーン等で全国に普及したが、売れ残りの大量廃棄が社会問題となり、2019年には農林水産省が需要に見合った販売を業界団体に要請する異例の事態となった。
国内では年間の食品廃棄物等(食品の加工残さ、調理くず、賞味期限切れ食品、廃食用油等)は2550万トン、そのうちの食品ロスが612万トン発生し(2017年度推計)、その内訳は事業系(メーカー、卸売り、小売り、外食産業等)が328万トン、一般家庭284万トンとなっている。これらの食品廃棄物の多くは焼却処理され、多額の財源が処理に充てられている。
国際的には、国連食糧農業機関(FAO)が世界の3分の1の食料が廃棄されているという調査結果を2011年に公表し、2015年9月に採択されたSDGsでは目標12の中に2030年までに一人あたりの食品の廃棄を半減させることが掲げられた。SDGs が重視するのは食品ロスを発生させないリデュースであり、イタリア・フランスでは2016年に食品廃棄規制法が成立している。
国内では最終処分場の問題等も背景に、食品関連事業者からの食品廃棄物のリサイクルを促進するため食品リサイクル法が2001年に制定された。食品ロス・食品廃棄物のリデュースについては2019年7月に食品リサイクル法に基づく新たな基本方針が公表されるとともに、食品ロスの削減の推進に関する法律が2019年10月に施行、2020年3月に食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針が閣議決定された。国内の目標である2000年度比で2030年度までに食品ロスを半減させるための事業者と家庭の双方での取り組みが動き出した。
本特集ではこのような食品ロス・食料品廃棄を巡る問題について、家庭における食品ごみの実態と削減策、食品ロス削減推進法制定の論議経過と消費者による生活創造、賞味期限表示や納品期限緩和等の流通における対策、世界の食料・農業事情と食品ロス・廃棄削減の取り組み、SDGs における食品ロス削減と英仏の取り組み、生協における食品リサイクル・ループの構築や規格外農産物の取り扱い・フードドライブ活動等について論じている。食品ロス・食品廃棄物に関わる問題の理解と、削減の取り組みへの示唆となれば幸いである。
(渡部 博文)
主な執筆者:浅利美鈴、上村協子、石川友博、日比絵里子、小林富雄、竹村 久、宮川和之
目次
- 巻頭言
- アフターCOVID-19の世界(大石芳裕)
- 特集 食品ロス・食品廃棄物削減
- 家庭ごみ調査から考える食品ロスの実態と削減策(浅利美鈴)
- 食品ロス削減推進による穏健なる生活革命─消費生活協同組合の生活創造─(上村協子)
- 流通における食品ロス削減の動向(石川友博)
- 世界の食料ロス・廃棄のさらなる削減に向けて(日比絵里子)
- 世界の食品ロス対策とSDGs─ポストコロナ時代に向けた日本の展望─(小林富雄)
- 大阪いずみ市民生活協同組合の食品リサイクル・ループ(竹村 久)
- コープデリ連合会の「もったいないアクション」(宮川和之)
- 研究と調査
- コロナ禍における遺児家庭の困難─あしなが育英会・オンライン調査の分析から─(加藤朋江)
- 本誌特集を読んで(2021・1)
- (髙山昭彦・林 薫平)
- 新刊紹介
- 鈴木哲也著『学術書を読む』(加賀美太記)
- 『兵庫県生活協同組合連合会 70周年記念誌』(鈴木 岳)
- 研究所日誌
- アジア生協協力基金2021年度助成先決定のお知らせ
- 生協総研賞・第17回助成事業研究論文集を刊行しました