生活協同組合研究 2021年1月号 Vol.540
大規模化する災害への対処──東日本大震災10年と感染症流行をふまえて──
昨年の最大の災禍はCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)であり、まだ続いていることは言うまでもない。もちろん、例えばいわゆる集中豪雨の「令和2年7月豪雨」が九州や中部地方などの各地で暴れ、熊本県を中心に多大な被害を出したことは記憶に新しい。しかし、防災や復興と感染症を両立させるという新たな課題も噴出した。さらに2021年は東日本大震災の10年目にあたる節目の年ともいえる。実際には復興はどういう局面にきているのか。今後も気象や地震などから派生する大きな災害が想定されるなか、どのように準備し、避難し、減災し、再建していくのか。
そこで今回は、災害への対応を中軸としてCOVID-19と東日本大震災10年を左右においた特集を、以下のとおり組んだものである。
矢守克也氏には、「既往最大」・「素振り」・「ポテンシャル」という3つの幾分奇抜な言葉から、従来の考え方の再考を促していただいている。
岩船昌起氏からは、COVID-19下にあって、これに対する対策を織り込んだ自然災害への対応について考察していただいたものである。
石川伸一氏は、食が災害時にあっても、おいしさや栄養バランスが必要なことや、備蓄食の新陳代謝などについて記していただいている。
福留邦洋氏には、東日本大震災の被災地における地域コミュニティをふりかえりつつ、再建の歩みを追っていただいた。
東日本大震災後を語るうえで、とりわけ多くの方々が被災したにもかかわらず、みやぎ生協といわて生協で組合員と職員が地域社会とともに復興にむけて多大な尽力を行ってきたこと、このことは言うに及ばない。今回はこれらの近況を中心に、それぞれ大越健治氏と金子成子氏に記していただいている。
津波による壊滅的な打撃を受けた南三陸・志津川の復興に関する定点観測的なインタビューは、今回で通算6回目である。今回も佐藤俊光氏と高橋源一氏のお話をうかがえた。
それぞれに重要な視点が潜んでいると思う。新年号としては重い特集テーマであるかもしれないが、どうぞお読み取り下さい。
(鈴木 岳)
主な執筆者:矢守克也、岩船昌起、石川伸一、福留邦洋、大越健治、金子成子、佐藤俊光、高橋源一
目次
- 巻頭言
- 100年後の地球と食料を考える(中嶋康博)
- 特集 大規模化する災害への対処──東日本大震災10年と感染症流行をふまえて──
- 豪雨災害防災について考えるための3つのキーワード ─「既往最大」・「素振り」・「ポテンシャル」─(矢守克也)
- 新型コロナ下における自然災害への備え(岩船昌起)
- 災害時における食の準備と実際について(石川伸一)
- 過去の災害からみた地域再建と課題 ─地域コミュニティなどの視点から─(福留邦洋)
- 東日本大震災からの復興の取り組みを振り返って ─みやぎ生協の活動と事業より─(大越健治)
- 東日本大震災10年をむかえる岩手県の近況といわて生協の取組みについて(金子成子)
- 志津川事情を語る⑥(佐藤俊光・高橋源一(聞き手:鈴木 岳))
- 新型コロナウイルスへの各国生協の対応⑦
- フランスのCOVID-19と生協の対応(下)(鈴木 岳)
- 本誌特集を読んで(2020・11)
- (加藤 亮・志波早苗)
- 新刊紹介
- 樋口恵子・上野千鶴子『しがらみを捨ててこれからを楽しむ』(山崎由希子)
- 研究所日誌
- 公開研究会「新型コロナウイルス感染症影響下の地域における活動~組織の枠を超えた医療生協の取り組み事例から~」(1/21)
- 公開研究会(予告)「感染予防体制下での子どもの貧困」(2/12)
- 公開研究会「新型コロナウイルス感染拡大前後の生協利用の変化」(2/26)
- 第13回生協総研賞「表彰事業」候補作品推薦のお願い