刊行物情報

生活協同組合研究 2020年12月号 Vol.539

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新型コロナウイルス感染症と消費者の生活

 2020年は正に新型コロナウイルス感染症の年であったといえるだろう。厚生労働省が、中国武漢において病原体の特定されていない肺炎が発生していると注意喚起をしたのが2020年1月6日であり、2020年12月現在においても新型コロナウイルス感染症の影響は衰えていない。

 新型コロナウイルス感染症は消費者の生活も一変させた。外出するときにマスクをするのは当たり前、買い物をするときに人とは距離を保つのは当たり前、店員さんとの間にはビニールやプラスチックの仕切りがあるのが当たり前。人と直接会うことは避け、Zoom 等の Web ミーティングやビデオ通話がコミュニケーションの重要な手段となった。飲食サービス産業や観光産業など、産業によっては非常に大きな経済的打撃を受け、収入や働き方に大きな影響を受けた方も少なくない。

 新型コロナウイルス感染症によってもたらされたこのパラダイムシフトについて、一消費者、一生活者への影響を把握しようとするのが本特集の目的である。ただし、影響があまりに広範にわたるため、「消費」と「雇用」の部分に重きを置きつつ、感染した場合のリスクが大きいとされる高齢者の生活に焦点を当てることとした。

 北濱稿では、新型コロナウイルス感染症により、消費者や社会の価値観がどのように変容しているかを整理しながら、今後求められるマーケティングの在り方について考察頂いた。小方稿では、雇用市場がどのような影響を受けているか、時系列データを中心に解説頂いている。荒井稿では、健康的な側面で最も大きな影響を受けたであろう高齢者の生活の変化や必要な支援策についてまとめて頂いた。また、当研究所では2020年10月に新型コロナウイルス感染症と生協利用に関する独自調査を実施しており、その結果の速報を中村稿において紹介している。

 近年稀にみるこの強大な感染症は私たちの生活をどう変えたのか、そして、今後さらにどう変わっていくのか。本特集がそれらを考察する上での一助となれば幸いである。

(宮﨑達郎)

主な執筆者:北濱利弘、小方尚子、荒井秀典、中村由香、宮﨑達郎

目次

巻頭言
性的マイノリティの権利保障(天野晴子)
特集 新型コロナウイルス感染症と消費者の生活
生協と「Withコロナ時代の食品マーケティング」(北濱利弘)
新型コロナで変わる雇用市場(小方尚子)
新型コロナウイルス感染症による高齢者の生活の変化と必要な支援(荒井秀典)
新型コロナウイルス感染拡大前後の生協利用の変化(中村由香)
新型コロナウイルス感染症と家庭の消費支出の変化(宮﨑達郎)
新型コロナウイルスへの各国生協の対応⑥
フランスのCOVID-19と生協の対応(上)(鈴木 岳)
本誌特集を読んで(2020・10)
(野々山理恵子・石堂徹生)
書籍紹介
Morris Altman, Anthony Jensen, Akira Kurimoto ed. “Waking the Asian Pacific Co-operative Potential”(和泉真理)
研究所日誌
公開研究会「感染予防体制下での食生活の動向─家計と購買データをみる(12/8)」
公開研究会「『労働者協同組合』を学ぶ・国際編(12/25)
公開研究会「新型コロナウイルス感染症影響下の地域における活動~組織の枠を超えた医療生協の取り組み事例から~」(2021/1/21)
第13回生協総研賞「表彰事業」候補作品推薦のお願い