刊行物情報

生活協同組合研究 2020年8月号 Vol.535

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戦争・被爆体験の継承

 2020年は終戦・被爆から75年、核兵器不拡散条約(Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons : NPT)発効から50年の節目の年にあたる。この節目の年に予定されていた NPT 再検討会議(2020年4~5月)は新型コロナウイルスの感染拡大により延期となり、生協代表団の派遣も見送りとなったが、生協が平和を希求し続けることの必要性に変わりはない。 2019年7月号より不定期連載をしてきた「継承・発信 平和の取り組み」の集大成として、「戦争・被爆体験の継承」をテーマに特集を組むものである。

 木戸季市氏には、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言の解除後(本年6月1日)にインタビューを行った。ご自身の被爆体験や被団協運動などについてお話を伺い、被爆者と市民の協働の取り組みへの期待も語っていただいた。

 直野章子氏には、これまで言われてきた「体験の継承」にかかわる幾つかの前提を問い直す中で戦争・被爆「体験の継承」の意味を考え、「被爆体験の継承」において求められていることを提起していただいた。

 山口響氏には、ご自身の経験をベースに「原爆体験とは何か?」「継承するとは何か?」という2つの問いに対する考えをお示しいただいた。

 古賀徳子氏には、元ひめゆり学徒が主体となった資料館活動と体験の継承、彼女たちからバトンを託されたひめゆり平和祈念資料館職員による新たな平和教育の取り組みを紹介いただいた。

 山田朗氏には、あまり語られることのない〈裏の記憶〉を含めた、戦争の表裏の記憶継承の必要性について論じていただいた。

 アメリカとロシアの間の中距離核戦力(INF)全廃条約が2019年8月に失効、2021年2月に期限を迎える両国間の新戦略兵器削減条約(新 START)も期限延長の目処が現時点では立たないなど、核軍縮をめぐる情勢が厳しさを増す一方で、2017年7月に採択された核兵器禁止条約を批准する国の数は着実に増えている(50か国目の批准書が国連事務総長に寄託されてから90日後に発効)。本誌が「平和」を特集テーマに据えることは稀であるが、今回、2020年という節目の年の「8月」号で特集を組んでみた。生協が、多様な関係者とともに「継承」という重い課題に取り組み、今後も平和の活動の裾野をさらに広げていくにあたってご一読いただければ幸いである。

(中村良光)

主な執筆者:木戸季市、直野章子、山口響、古賀徳子、山田 朗

※連載「新型コロナウイルスへの各国生協の対応」では、カナダの生協の取り組み、協同組合・相互扶助の保険組織の取り組みを取り上げています。

目次

巻頭言
オンライン授業(麻生 幸)
特集:戦争・被爆体験の継承
被団協運動を原爆被害者と市民の協働の取り組みに(木戸季市)
参考資料:原爆被害者の基本要求 ─ふたたび被爆者をつくらないために─
当事者になる ─体験の継承者から記憶の担い手へ─(直野章子)
長崎の原爆体験を継承するために(山口 響)
沖縄戦の次世代への継承 ─ひめゆり平和祈念資料館の取り組み─(古賀徳子)
戦争の記憶をどう引き継ぐか:〈表の記憶〉と〈裏の記憶〉(山田 朗)
連載:協同組合系研究所の逐次刊行物より⑰<最終回>
『社会的連帯経済』(鈴木 岳)
新型コロナウイルスへの各国生協の対応④
カナダにおける新型コロナウイルス問題と生協の対応(山崎由希子)
協同組合・相互扶助の保険組織とCOVID-19(上)(小塚和行)
海外情報
第14回 国際協同組合同盟アジア・パシフィック地域研究会議 参加報告(近本聡子)
研究と調査
買い物弱者支援における生協と営利企業,自治体の協働の効果 ─生協とコンビニエンスストアによる一体型店舗からの考察─(清水仁美)
本誌特集を読んで(2020・6)
(山根康寛・山田泰蔵)
新刊紹介
友愛・協同研究会編『友愛協同論』(鈴木 岳)
研究所日誌
公開研究会「<第3期>生協論レビュー研究会から―現在へと続く生協のあゆみの考証―」(8/27・四ツ谷)
公開研究会「人生100年時代の老後資金と資産運用」(9/29・四ツ谷)