生活協同組合研究 2020年7月号 Vol.534
買い物弱者問題を再考する
以前、本誌では2010年9月号で「『買い物弱者』問題と流通システム、生協購買事業」と題する特集を組んだ。さらに2011年12月号で「いまもう一度、フードデザートを考える」という特集もつづけた。
その後しばらく経たが、全国の殆どの地域で一層の高齢化、さらには超高齢化が間違いなく進み、地域や経済の格差は拡大し、公共交通が衰退し、自動車免許の返上が当たり前になっている。そのなか、買い物弱者、フードデザート(食の砂漠)を巡る状況はどうなっているのか、そしてどのような取り組みがなされているのか、交通事情は、そして生協の状況はどうか。本号では、以上のような問題意識から特集を組んだものである。
岩間信之氏と森傑氏は、まさにこの課題にも早くから着目してきた中心的な研究者であり、本誌でも複数回執筆されている。上記の2011年12月号でも、岩間氏が「フードデザート問題と地域コミュニティ」、森氏が「『まちの整体』から震災復興への展望」で登場していただいているので、ご記憶の読者もおられよう。
長年、農協を軸としながらも多面的に協同組合の研究をされてこられた重鎮・白石正彦氏には、買い物弱者に対する農協の移動販売車の諸例を記していただいている。
鉄道など運輸系のテーマに関して多数の著作を執筆されている堀内重人氏からは、買い物弱者の足の確保に関する課題についての論考をいただいた。
最後に現状の全国での生協の買い物バスと移動販売車について、愚生が基本的な概要を残すものである。
本稿を依頼したころには図書館などがすでに閉鎖されてしまい、しばらく後には「緊急事態宣言」により、取材なども全くかなわなくなった。このような極めて厳しい状況下にもかかわらず、予定どおりにご執筆をいただいた4氏に、深く御礼を申し上げる次第である。
(鈴木 岳)
主な執筆者:岩間信之、森 傑、白石正彦、堀内重人、鈴木 岳
※連載「新型コロナウイルスへの各国生協の対応」では、アメリカ・ヨーロッパの生協の取り組み、韓国の生協の取り組み、カナダにおける新型コロナウイルスの概況を取り上げています。
目次
- 巻頭言
- 「普通の生活」のありがたさ(岩田三代)
- 特集:買い物弱者問題を再考する
- 改めてフードデザート問題と地域の動向を整理する(岩間信之)
- 「まちの整体」その実践と展望(森 傑)
- 中山間地域農協の移動購買者事業活動の展開 ―買い物弱者との心豊かなふれあいと食べ物ニーズに対応―(白石正彦)
- 買い物バスの現状と今後の課題(堀内重人)
- 生協の買い物バスと移動販売車(移動店舗)の現況(鈴木 岳)
- 連載:協同組合系研究所の逐次刊行物より⑯
- 『多摩けいざい』(三浦一浩)
- 新型コロナウイルスへの各国生協の対応③
- アメリカ、ヨーロッパの生協とCOVID-19(天野晴元)
- 韓国の生協とCOVID-19(姜 星俊)
- カナダにおける新型コロナウイルス問題の概況(山崎由希子)
- 研究と調査
- 若年層から見た生協宅配のブランド価値 ―生協組合員のブランド価値の年代別比較分析―(鶴田 健)
- 本誌特集を読んで(2020・5)
- (大信政一・塩入雄一郎)
- 研究所日誌
- 第18回生協総研賞「助成事業」の応募要領(抄)
- 公開研究会「<第3期>生協論レビュー研究会から―現在へと続く生協のあゆみの考証―」(8/27・四ツ谷)
- 追悼 都筑忠七氏