生活協同組合研究 2020年3月号 Vol.530
食の簡便化志向の現在
本特集のテーマは「食の簡便化」である。近年の消費者の食における簡便・時短ニーズの高まりは周知の事実であるが、ミールキットや冷凍食品をはじめとした簡便化食品は今後さらに普及していくものと考えられる。本特集では、現在の食の簡便化の到達点について、整理することを目的としている。
冒頭の拙稿では、総務省統計局の家計調査や、生協総合研究所で実施した調査から、特に調理食品の消費動向について整理した。読者の方にとっては既知の部分も多いと考えられるが、調理食品の消費がどの程度伸びており、消費者からどのように受け入れられているのか、簡潔にまとめている。
阿古稿ではミールキットに注目して、市場が拡大している要因について考察頂いた。ミールキットの始まりから市場が活性化し、現在に至るまでの流れを、事例を交えながらわかりやすく整理して頂いている。
山本稿では冷凍食品に注目して、業界におけるヒット商品を振り返りながら、今後の未来を考察して頂いた。どのような商品が、どのようにしてその時代のニーズに合わせて登場してきたかは、今後の冷凍食品の未来を予想する上で大変参考になる内容となっている。
長村稿では、調理食品等で消費者からは最も懸念される食品添加物の安全性について、解説頂いた。食品添加物の安全性評価について、使われている指標を解説して頂きながら、食品添加物の適切な活用について論じて頂いた。
鈴木稿では、日本国外の食の簡便化事情について概説頂いた。各国の文化や消費者の生活様式に合わせるように、食の簡便化にも様々な形があることを紹介している。
食の簡便化は、1つの技術的な進化の過程とも考えることができる。数年後、十数年後には新たな食の簡便化技術が登場しているだろう。食が人の生活の変化に合わせてどのように進化していくのか、今後も注視していきたい。
(宮﨑達郎)
主な執筆者:宮﨑達郎、阿古真理、山本純子、長村洋一、鈴木 岳
目次
- 巻頭言
- 健康寿命の男女差と食生活(樋口恵子)
- 特集 食の簡便化志向の現在
- 調理食品に関わる消費の動向について(宮﨑達郎 )
- ミールキット市場 拡大を続ける3つの要因(阿古真理)
- 業界50年のヒット商品から未来を探る──「手間抜き」が心に響く家庭の食事情──(山本純子)
- 食品添加物の安全性は今どうなっているのか(長村洋一)
- 諸国における食の簡便化事情(鈴木 岳)
- 連載 フォーカス くらしと社会の最新事情⑫<最終回>
- レジ袋有料義務化の概要と課題、他社の動き(小野光司)
- 連載 協同組合系研究所の逐次刊行物より⑫
- 『社会運動』(香西 幸)
- 海外情報
- 第7回ヨーロッパ社会的企業研究ネットワーク(EMES) 国際学会参加報告(山崎由希子)
- 本誌特集を読んで(2020・1)
- (秃 あや美・北村 洋)
- 新刊紹介
- 樋口恵子著『老~い、どん!』(山崎由希子)
- 研究所日誌
- 公開研究会 都市と若年世代の未来(4/4・名古屋)
- アジア生協協力基金2020年度助成先決定のお知らせ
- 「生協社会論」受講生募集
- 新刊のご案内 佐藤博樹編著『ダイバーシティ経営と人材マネジメント』