生活協同組合研究 2019年5月号 Vol.520
人口減少社会下の生協組合員のくらし―2018年度全国生協組合員意識調査をベースに―
特集は、日本社会が進行中の「人口減少」に焦点をあてながら、2018年に実施された全国生協組合員意識調査のデータをベースにくらしの変化の大きなものをピックアップしている。全国生協組合員意識調査は、日本生協連が公益財団法人 生協総合研究所に委託して1994年から3年おきに、全国の地域購買生協の組合員数上位30生協の組合員6,000人を対象に実施しており、 2018年調査は9回目である。報告書は本研究所で頒布している(web で検索可能です)。
今回の調査では、人口減少のもう一つの表現である「少子高齢化」の影響が大きくでており、組合員の平均年齢が過去最高になった一方、家族構成、就業状況の変化など、組合員の世代間のギャップ、及び、くらしの更なる多様化が浮き彫りになっている。
まず、人口減少について、地理学や人口学の視点から研究を続けてこられた島根大学の作野広和氏に、人口増減について、マクロな(社会全体への)影響について、そして人々が移動を始めていること、などを明らかにしていただいた。日本生協連の炭谷昇氏は、18年度調査の担当をされ、フォーカスするべきところを丁寧にピックアップしていただいた。読者も基本的な組合員の動向について読み込んでいただきたい。
本研究所の近本聡子は若年層女性の就業とくらし(ライフ・ワーク・バランス)の大激変と、同時に子どもの育て方も変わっていることについてフォーカスして、ぜひこの変化をとらえて欲しいという思いも込めて紹介している。本研究所の宮﨑達郎は、本調査 data から高齢者が今は生協での購買を支えているが、高齢化は進むこと、そして、低利用化はどのようなところに起因するのか探索的に分析している。
この度、同じ調査票と方法論で並行調査を実施した鳥取県生協の小林茂樹氏は、実際の組合員 data と調査 data を比較しながら、鳥取の人口減少について、また、若年層が調査に回答していないことも明らかにしている。初めての試みとして本調査と利用履歴との紐付け data を作成した、大阪いずみ市民生協の三原章次氏は、調査手法でかなり回収状況が異なることや、回答者に偏りがあることも指摘している。生協にとり貴重な data となっている。是非ご一読いただきたい。
(近本 聡子)
主な執筆者:作野広和、炭谷昇、近本聡子、宮﨑達郎、小林茂樹、三原章次
目次
- 巻頭言
- 2018年度全国生協組合員意識調査に思うこと(加藤好一)
- 特集 人口減少社会下の生協組合員のくらし ―2018年度全国生協組合員意識調査をベースに―
- 人口減少社会への向き合い方(作野広和)
- 組合員の今を知り、生協の未来を考える(炭谷 昇)
- 生協は現代の「ワンオペ育児」「ワンオペ生活」を支えているのか
──専業主婦がマイノリティとなった現代の生活変動── (近本聡子) - 対応が迫られる生協組合員の高齢化と低利用化(宮﨑達郎)
- 2018年度 鳥取県生協組合員意識調査の結果と今後の課題について(小林茂樹)
- 調査回答に回答者の利用・登録データを紐づけての分析(三原章次)
- 連載 フォーカス くらしと社会の最新事情②
- ゲノム編集技術を利用した食品とは ~いま、何が問われているのか(森田満樹)
- 連載 協同組合系研究所の逐次刊行物より②
- 『季刊 くらしと協同』(久保ゆりえ)
- 本誌特集を読んで(2019・3)
- (戸田真理・脇田泰子)
- 新刊紹介
- ヘンリー・ハンズマン著、米山高生訳『企業所有論─組織の所有アプローチ』(栗本 昭)
- 研究所日誌
- 生協総研レポートNo.89 刊行のご案内