生活協同組合研究 2019年1月号 No.516
生協の新たなミッションを提言する ─「第2次2050研究会」からの構想
本号は、2018年10月13日に開催した生協総研の第28回全国研究集会の報告と討論を整理して収めたものである。
超高齢・少子・人口減少・単身社会の只中にある2050年において現在の生協のビジネスモデルと組織モデルで組合員・地域住民の毎日の暮らしに役立つことができるのか。その解を求めて2013年4月に生協総研は2050研究会を立ち上げ、その研究成果を「2050年 超高齢社会のコミュニティ構想」として2015年8月に刊行した。この構想の柱となるのは全国1万5、000の小学校区に元気な高齢者が運営主体となる「集いの館」を展開することである。「集いの館」は食料品等の販売、くらしの相談窓口、居場所としてのフリースペースで構成することをイメージした。
この「集いの館」構想は大きな反響を呼び、生協総研は構想を具現化するとともに新たな地域生協のミッション・ビジョンを検討することを目的に第2次2050研究会を2016年4月に設置し2年間で12回の研究会を開催した。さらに、この研究会と並行して、パルシステム東京との「2050共同研究プロジェクト」を2017年1月から6月にかけて開催した。
これらの研究成果は、生活協同組合研究2018年1月号「地域社会における拠点づくりを進める~2050研究会構想『集いの館』の実現に向けて」で中間的報告を行い、最終的には「2050年 新しい地域社会を創る 『集いの館』構想と生協の役割」として刊行した。
今回の全国研究集会はこれらの研究成果を踏まえ、第2次2050研究会の座長を務めていただいた京都大学の若林靖永教授による講演、近畿大学の玉置了准教授及び生協総研の鈴木岳研究員による報告、パルシステム東京の辻正一専務及び朽木住民福祉協議会代表の海老澤文代氏による実践報告、パネルディスカッションで構成されている。
講演の中で若林教授は「このミッションの特徴は、今後の地域生協の中心的に頑張る領域は地域だ、コミュニティなんだということを深く強調したい。しかし、それは旧来型の農村共同体のようなものではなくて、社会的責任や他人への配慮といった倫理的価値を基礎にして新たな形を提案してほしい」と指摘している。多くの生協で新たなビジョンの策定に向けた取り組みが進められているが、今回の特集が未来における生協の役割をデザインするための参考となれば幸いである。
(渡部 博文)
主な執筆者:生源寺眞一、若林靖永、玉置 了、鈴木 岳、辻 正一、海老澤文代、福西啓次、石原淳子、日向祥子、小方 泰
目次
- 巻頭言
- 生協総研30周年に思う(小方 泰)
- 特集 生協の新たなミッションを提言する ─「第2次2050研究会」からの構想
- 開会の挨拶(生源寺眞一)
- 第2次2050研究会からの提言(若林靖永)
- ミッション・ビジョンの比較研究からみえてくるもの ─地域生協と流通・小売業の比較研究─(玉置 了)
- 協同組合論の観点から2050年の地域社会と生協を考える(鈴木 岳)
- なぜ2050構想と「集いの館」なのか ─パルシステム東京における取り組み─(辻 正一)
- 誰もが集まれる地域の居場所『寄り合い処くっつき』(海老澤文代)
- パネルディスカッション 第1部「具体的実践から見えてきたこと」(座長:若林靖永/パネリスト:福西啓次・石原淳子・辻正一・日向祥子)
- パネルディスカッション 第2部「2050年の地域生協のミッション・ビジョンを考える」(座長:若林靖永/パネリスト:福西啓次・石原淳子・辻正一・日向祥子)
- 閉会の挨拶(小方 泰)
- 時々再録
- 現場で使える音声翻訳アプリ(白水忠隆)
- 本誌特集を読んで(2018・11)
- (渡辺精一・麻生 幸)
- 新刊紹介
- ブレイディみかこ、松尾匡、北田暁大著『そろそろ左派は<経済>を語ろう―レフト3.0の政治経済学』(福永 宏)
- 研究所日誌
- 公開研究会
- 「人生100年時代のライフプランニング」(2019・2/1・福岡)
- 公開研究会
- 「社会的(連帯)経済の最新事情」(2/25・東京)