生活協同組合研究 2018年4月号 Vol.507
ディスカウントストア
いまや生計費の倹約に知恵を絞る多くの消費者にとって、通常の買い物先として脳裏に浮かぶもの、それは住まいの周辺にあり、たいていは駐車場に多くの場所を取って全国に林立している各種のディスカウントストア(DS)であろう。そしてその展開は高級住宅街にさえ及びつつあり、例えば東京の田園調布にもオーケーがこの3月に開店したくらいである。
ところが、これだけ一般の人々になじみがあるDSについて、この業態の定義さえ難しいという。そこで、冒頭では流通研究の第一人者である矢作敏行氏にお話を承るという形で教えを乞うた。本稿では、国外、とりわけアメリカの歴史から今日の日本の展開に至るまで、簡潔にかつ広範に本テーマの要点をご解説いただいている。
次からの2つの稿は、ともに本テーマについてかねてから精力的に取材を重ねられている第一級のジャーナリストからの論考となる。昨今のDSは食品市場への攻勢を強めている。近年では青果物の販売を始めたドン・キホーテや、ダイレックス(サンドラッグ傘下)やトライアルHD、大黒天物産などの加速する出店、イオンのDS事業や、そしてDS全体での盛衰を石橋忠子氏にお記しいただいた。さらに、ドラッグストアやホームセンターなどの異業種からも生鮮食品の取り扱いを強化しているが、そのそれぞれの戦略と展開について、森本守人氏に記載をお願いした。
世界のDSの動向はどうか。今や多くの欧州諸国の流通業界で目立つのはアルディとリドルである。急成長するこれらのDSについて、現地で調査を重ねてこられた気鋭の川端庸子氏に、その状況と周辺を論じていただいた。
コラムとして、DSと競合する欧州諸国の生協がどのような対抗策をとっているのかを当研究員の佐藤孝一が記している。また、国内のDSのPB商品について、鈴木がわずかに紹介をした。
いまやコンビニエンスストアとともに相応の消費者からの支持を得ているDSについて、改めて認識する機会となれば幸いである。
(鈴木 岳)
主な執筆者:矢作敏行、石橋忠子、森本守人、川端庸子、佐藤孝一、鈴木 岳
目次
- 巻頭言
- 現場に学ぶ(生源寺眞一)
- 特集 ディスカウントストア
- ディスカウントストア論 ─歴史と理論 矢作敏行教授に聞く─(矢作敏行)
- 加速するディスカウントストアからの食品市場への攻勢(石橋忠子)
- 生鮮食品により集客力強化を図る異業態 ─積極的な出店でさらなる競争激化は必至─(森本守人)
- 世界で急成長するディスカウントストア ─アルディとリドル─(川端庸子)
- コラム1 欧州生協のディスカウントストア対応の状況(佐藤孝一)
- コラム2 ディスカウントストアとプライベートブランド(鈴木 岳)
- 海外情報
- 第6回EMES(社会的企業に関する国際学会)参加報告(山崎由希子)
- 時々再録
- START FAST, FAIL FAST ─日本にイノベーション文化は育つか─(白水忠隆)
- 本誌特集を読んで(2018・2)
- (田中 陽・三浦一浩)
- 新刊紹介
- 丸山茂樹著『共生と共歓の世界を創る―グローバルな社会的連帯経済をめざして』(鈴木 岳)
- 「生協と社会論」受講生募集
- アジア生協協力基金2018年度助成事業計画決定のお知らせ
- 研究所日誌
- 公開研究会 4/27<東京会場>
- 公開研究会 5/19<京都会場>
- 『生活協同組合研究』総目次