生活協同組合研究 2018年1月号 Vol.504
地域社会における拠点づくりを進める ~2050研究会構想「集いの館」の実現に向けて~
今月号は当研究所で開催している第2次2050研究会の研究中間報告である。第2次2050研究会は2016年度より(第1次)2050研究会の提言である「集いの館」構想を受け、その構想を新たな社会システムとしてデザインし実行プロセスを具現化することと、2050年の地域生協のミッション・ビジョンを提言することのふたつを目的として研究を続けている。今回は主に「集いの館」構想の具現化に向けた研究成果を報告する。
昨年度は3つの地域生協にも協力をいただき、役職員及び組合員の参加する地域ワークショップを開催し、「集いの館」構想の具体的なニーズ把握を行ってきた。また、地域生協と「集いの館」構想の実現に向けた共同研究も進めてきた。
冒頭論文は研究会の座長でもある京都大学の若林先生にこれまでの第2次2050研究会の取り組みとワークショップの状況について具体的な報告をいただいた。次の前田論文は地域社会における実践事例として福岡の「おたがいさまコミュニティ」の展開を紹介いただいた。日経新聞の白鳥氏には研究会でも研究テーマとして取り上げたヤマザキショップや全日食などのミニスーパーの地域貢献の取り組みについて報告をまとめていただいた。
また、滋賀県高島市の山間地域である朽木(くつき)地区で取り組んでいる地域施設「寄り合い処くっつき」のこれまでの経過と近況について中心的な役割を担ってきた方々にインタビュー調査を実施した。「寄り合い処くっつき」は2017年4月より一般の方から提供された民家を借りて運営を行っている。まさに「集いの館」のように地域住民の拠り所をめざしている。
「『集いの館』構想モデル計画」はこの間、当研究所とパルシステム東京で進めてきた共同研究報告である。パルシステム東京で現在所有する施設を有効活用し活動を発展させていく具体的な実行計画を策定した。
玉置論文は研究会のもうひとつのテーマの地域生協のミッション・ビジョン分析報告である。主要流通業と比較をしているので現在の地域生協の特徴がわかると思う。
現在、地域生協に限らず多くの行政や研究所で地域社会の拠点づくりに関する研究や調査が進められている。一部の成功事例が取り上げられているが、失敗事例も多くあり今後の継続性には課題も多く、多くの組織が試行錯誤しながら取り組んでいるのが現状である。
今回の研究中間報告がこれからの地域社会の拠点づくりの参考になれば幸いである。
(小方 泰)
主な執筆者:若林靖永、前田展弘、白鳥和生、渡部博文、辻 正一、小方 泰、天野恵美子、日向祥子
目次
- 巻頭言
- 未来の雇用を考える(小方 泰)
- 特集 地域社会における拠点づくりを進める ~ 2050研究会構想「集いの館」の実現に向けて~
- 「集いの館構想」地域ワークショップ ~第2次2050研究会の取り組みとこれから~(若林靖永)
- 地域の機能・資源を統合するまちづくり ~「おたがいさまコミュニティ」~(前田展弘)
- 地域におけるミニスーパーの取り組み(白鳥和生)
- 「寄り合い処くっつき」の拠点づくり(渡部博文)
- 2050研究会「集いの館」構想モデル計画について ~パルシステム東京における地域拠点の設置構想~(辻 正一・小方 泰)
- コラム1 人口減少・高齢社会における「共助」と「商助」(天野恵美子)
- コラム2 最大公約数? 最小公倍数?(日向祥子)
- 研究と調査
- テキストマイニングを用いた地域生協のミッション・ビジョンの検討(玉置 了)
- 海外情報
- 欧州6ヵ国の生協の経営概況 ──イギリス、フィンランド、スウェーデン、デンマーク、スイス、スペインの生協の2016年度決算状況から──(佐藤孝一)
- 時々再録
- 問いが透明性を保つ ──更田豊志・原子力規制委員会委員長会見──(白水忠隆)
- 本誌特集を読んで(2017・11)
- (斎藤雄介・東久保浩喜)
- 研究所日誌
- 公開研究会「女性と子どもの貧困 地域や生協で支援できること(仮)」
- 2018年全国生協組合員意識調査「並行調査」募集のご案内