生活協同組合研究 2017年5月号 Vol.496
プライベートブランド(PB)戦略を考える
今月号はプライベートブランド(PB)の特集を企画した。PB商品は流通小売業では事業戦略上極めて重要な位置を占めている。流通各チェーンの売場の商品配置を見るとそのチェーンの特徴とめざす方向が見えてくる。セブン&アイのPBであるセブンプレミアムは2007年の発売開始から一貫して品揃えを拡大し,グループ全体の売上高は2015年度に1兆円を超えた。また,海外に目を向けると米国のウォルマートはディスカウント系チェーンの台頭により,それまで拡大していたPBブランドを基幹ブランドのグレートバリューに集中する戦略に転換した。今回の特集は国内大手チェーンの動向や方向性のみならず,PBのこれまでの歴史を振り返るとともに,海外のPBの状況についても概括し,これからの生協のPB戦略について考えることを目的としている。
冒頭の中村論文はPB購入者の現状について分析するとともに,大手チェーンの最新動向を見据えた上で今後のPBの方向性について提言をいただいた。
次の藤井論文はCO・OP商品のブランド刷新の取り組みについて振り返るとともに,生協らしいCO・OP商品づくりについて言及している。
鈴木論文はPB誕生以降の歴史を概観している。特に1980~90年代の価格競争型PBの登場から2000年代以降のあらたな品質重視に転換したプロセスを重点的に記述している。さらに浦上論文はPB商品やナショナルブランド(NB)商品の展開について大手メーカーの立場を中心に展開戦略を概観していただいた。
また,神谷論文は欧州と米国の最新のPB戦略を概観し,日本のPBへの示唆をいただいた。佐藤論文は欧州生協のPBのトピックについて言及している。スイスのミグロは日本でもPB商品を展開したいと考えている。
海外のこれまでの動向から,流通小売業の寡占化が進めばPB商品の開発もさらに進むと考えられている。欧米と比較すると日本は流通小売業の上位企業への集中度が低く,PB商品の販売比率も低い。今後日本でも競争がさらに厳しくなり,流通小売業も欧米のように寡占化が進むことが想定できる。とするとPBのシェア率はさらに伸長する可能性がある。今回の特集企画が生協の代名詞とも言えるCO・OP商品のさらなる発展のヒントになることを期待したい。
(小方 泰)
主な執筆者:中村 博,藤井喜継,鈴木 岳,浦上拓也,神谷 渉,佐藤孝一
目次
- 巻頭言
- 旗を掲げる(本田英一)
- 特集 プライベートブランド(PB)戦略を考える
- 大手チェーンのPB戦略の動向とこれからの方向性──プレミアム化するPB市場──(中村 博)
- CO・OP商品のブランド刷新の到達点と今後の課題(藤井喜継)
- 日本におけるプライベート・ブランド小史(鈴木 岳)
- PB商品に対するナショナル・ブランド・メーカーの対応戦略(浦上拓也)
- 欧米大手小売業のPB戦略(神谷 渉)
- 欧州生協のPB商品(佐藤孝一)
- 時々再録
- 映画「わたしは,ダニエル・ブレイク」が描くイギリス社会(白水忠隆)
- 本誌特集を読んで(2017・2,2017・3)
- (中島達弥・関矢充人)
- 新刊紹介
- おぐらなおみ/読売新聞生活部 著『母娘問題 オトナの親子』(山梨杏菜)
- 研究所日誌
- 公開研究会
- 「福祉・医療における生協の存在と意義」(東京・中野5/15)
- 「組合員参加と購買行動の相互関係を解明する」(兵庫・神戸5/30)