生活協同組合研究 2016年7月号 Vol.486
特集 : 青果物の消費をめぐる動き
本特集は,昨年の本誌「水産物の消費をめぐる動き」(2015年7月号)の青果物版として構想したものである。いうまでもなく,「青果物」とは,野菜(青物)と果物を合わせた呼称である。ただ,本号では主に野菜系の消費動向を中心に扱っている。それとともに,生協の取り組みや,現代的な生産事情についても言及するものである。
大浦裕二氏の論考では,日本における青果物の消費量が停滞するなか,その商品特性や取引形態,店・アイテム・消費者の多様化,農林水産省統計による消費実態などを,包括的に記していただいた。
菊池宏之氏の論考では,農産物の生鮮品流通と消費構造の変化と課題,それに対応する事業者の動向についての具体的な幾つかの事例を提示していただいた。
宮﨑達郎(研究員)は,コープネット事業連合を取材し昨今の「産直」の考え方や到達点を聞き取りつつ,自らの問題意識をもとにQ&A形式でも整理している。
青柳靖元氏には,一般社団法人JC 総研が2015年8月に手がけた「野菜・果物の消費行動に関する調査」から,食する頻度やカット野菜の消費をめぐる状況など,数値をもとに解説していただいた。
現在は植物工場の第三次ブームだそうである。しかし効率的かつ安定的に生産しているように見える植物工場にも影のあることを石堂徹生氏の論考は教えてくれる。
なお本号の「巻頭言」では,本特集に合わせた都市農業と生協の協同について小林新治氏に記していただいている。さらにコラムでは,東京都内4生協の野菜セット比較や,山梨杏菜(編集補佐)の「野菜栄養価低下説」の真偽,スペイン南部の「ビニールハウスの海」を紹介している。
野菜と果物の区分に一律の基準がないと気づかされたのは,本特集を組んだ余得である。例えば,農林水産省の定義では,イチゴ,メロン,スイカなどを「果実的野菜」としている。
(鈴木 岳)
主な執筆者:大浦裕二,菊池宏之,宮﨑達郎,青柳靖元,鈴木 岳,山梨杏菜,石堂徹生
目次
- 巻頭言
- 都市農業の今後を支える地域のネットワークづくり(小林新治)
- 特集 青果物の消費をめぐる動き
- 青果物消費の実態と課題(大浦裕二)
- 農産品の消費,流通,生産における変化と対応課題(菊池宏之)
- 産直の次なる挑戦──コープネット事業連合へのインタビューから──(宮﨑達郎)
- 「野菜・果物の消費行動に関する調査結果~ 2015年~」から読み解く最近の消費動向について(青柳靖元)
- コラム1 ある週の東京都内4生協の野菜セットをみる(鈴木 岳)
- コラム2 野菜の栄養価低下は本当か──『日本食品標準成分表』を読む──(山梨杏菜)
- 植物工場の栄光と挫折──甘えの構造から脱却できるのか──(石堂徹生)
- コラム3 スペイン・アルメリアの奇跡──大規模ビニールハウス栽培の光と影──(鈴木 岳)
- 研究と調査
- 漁協の制度的特質と行動様式──守るべき点,変えるべき点は何か──(加瀬和俊)
- 時々再録
- 地震との共生──南海トラフ地震対策取材団に参加して(白水忠隆)
- 本誌特集を読んで(2016・5)
- (松本英明・小川節子・川口啓明)
- 新刊紹介
- 佐々波幸子 著『生きてごらん,大丈夫』(傘木 誠)
- 研究所日誌
- 第26回全国研究集会のご案内
- 公開研究会(7/12,大阪)のご案内
- 第14回生協総研賞「助成事業」の実施要領(7/29締切)