生活協同組合研究 2016年4月号 Vol.483
特集 : 組合員のくらしが見えているか ─2015年度全国生協組合員意識調査から─
「どのような人々が生協に集い,利用し,くらしているのだろうか」,このことを客観的に明らかにすることが全国生協組合員意識調査の目的である。本特集では,日本生協連政策企画部と当研究所が共同で実施した本調査のデータを利用して,組合員のくらしについて,報告書では十分に触れることができなかった部分に考察を広げる。
本特集では,まず冒頭で日本生協連政策企画部の久保典子氏に本調査の調査結果について代表的な部分を紹介して頂いている。その後,日本生協連政策企画部の三谷和央氏と当研究所の研究員が個別にテーマを持ち,それぞれが内容を掘り下げて考察をしている。目次を見て,関心のあるテーマの原稿だけでも読んで頂ければと思う。
全国生協組合員意識調査は,地域生協の組合員数上位30生協の組合員の中から無作為に抽出された6,000人が対象となる(各生協の組合員数に応じて割り当てがされている)。郵送でアンケート用紙を送り,回答後に返送してもらう手法を採用しているが,2015年度調査の回答数は4,018件,回収率にすると67.0%である。郵送調査としては非常に高い回収率であり,多様な組合員のくらしを捉えることができる。
次頁の表で,1997年調査から2015年調査までの,組合員の年齢,職業,収入などの社会的属性の変化を示した。組合員の高齢化,世帯年収の減少,生協利用額の減少,利用業態の変化など,18年間で組合員のくらしや生協利用の形は大きく変わった。今後も大きく変化していくことが予想されるが,継続的に調査を実施するなどして,全体の傾向を把握していかなければ,適切な計画や指針を設定することはできないだろう。
なお,特集タイトルを「組合員の生活が見えているか」とさせて頂いたが,本調査の結果だけをもって,組合員のくらしが見えるわけではない。統計はあくまで統計に過ぎない。店舗や配送,様々な組合員活動を通して,実際に組合員と触れ合う機会がある方が読者には多いと思う。その際に,こうしたデータがあった,と実体験と統計データが結びつき,組合員のくらしを理解するための一助になれば幸いである。
(宮﨑達郎)
主な執筆者:久保典子,近本聡子,三谷和央,宮﨑達郎,中村由香,小塚和行,若林靖永,白鳥和生,米田敬太朗
目次
- 巻頭言
- 他人ごととは言えないフード・セキュリティ(生源寺眞一)
- 特集 組合員のくらしが見えているか ─2015年度全国生協組合員意識調査から─
- 調査結果から見える生協の現状と課題(久保典子)
- 日本の人口変動と組合員のくらし ──中流階層崩壊時代の生活基盤に注視──(近本聡子)
- 組合員のインターネット利用(三谷和央)
- 食品の安全性はブランドとなりえるか(宮﨑達郎)
- 生協の購買額が高い人はどのような人か?(中村由香)
- 組合員のCO・OP共済に対する認知度と印象(小塚和行)
- 生協利用の多い組合員の分析を深めて欲しい(若林靖永)
- コラム1 組合員意識調査から見えてくる生協事業の課題(白鳥和生)
- コラム2 コープさっぽろの競争環境下におけるマーケティング戦略について(米田敬太朗)
- 時々再録
- 脱・被災地企業を目指す気仙沼ニッティング(白水忠隆)
- 本誌特集を読んで(2016・2)
- (高野真吾・菊谷宗徳)
- 新刊紹介
- 槇文彦著,聞き手・松隈洋『建築から都市を,都市から建築を考える』(高橋直彦)
- 研究所日誌