生活協同組合研究 2015年11月号 Vol.478
特集 : 土地のありかたを考える ─日本を中心に─
「公共社会が,商業または行政に関する一定の規制について審議するという場合に,土地の所有者たちが,自分たちの特定階級の利益を促進する目的で公共社会を誤り導くということは,少なくとも,かれらがその利益について一応の知識をもっているかぎりは,けっしてありえないことである。もっとも,かれらは,一応のこうした知識をあまりにも欠いている場合が多い」(『世界の名著 アダム・スミス「国富論」』中央公論社,1968年,p.230)
「土地」,それはくらし全般にかかわる土台をなすが,あまりにも大きすぎ多岐に渡る課題であるが故,「住まい」を除けば小誌では扱いかねてきた。しかしながら,経済社会の根幹から逃げ続けてはいけないという問題意識から,本号で住まいの大枠にある土地の特集を企画し,それぞれ一騎当千の専門家の方々に執筆していただいたものである。
劈頭の齊藤氏の論考では,土地情報に関して消費者の課題,さらに消費者教育の状況と結果,そして期待が述べられている。
清水氏の論考では,今後の住宅需要と住宅価格について,国際的な見地から論及されている。とりわけ2040年までの各国住宅価格のシミュレーションは,2050年を見据えた先の拙所での全国研究集会のテーマと通じるものである。
日本の土地区分をめぐる実際の情報提供が齊藤(当所研究員)のコラムであり,以下の前提のひとつとなるものである。
平松論考では,日本の地価についてを中心に,列島改造論からバブルを経て現在までの問題点を多角的に捉えつつ,日本における都市と国土計画のありかたを問うものである。
前論を受け,水口論考では日本の土地利用について制度の問題点を,さらに都市農地制度と税制の課題について論点を整理するものである。
小林論考では,日本の土地問題の状況について基本的な論点を示し,今後の論点について氏の見解を含め考察するものである。
今年は「国際土壌年」,これに関して山梨(当所編集補佐)のコラムで紹介した。
本企画の是非を巡っては内部でも異論があった。また掲載順を各論から総論へとしてみた。読者の反応に不安を抱きつつも,少し期待している。
(鈴木 岳)
主な執筆者:齊藤広子,清水千弘,齊藤真悟,平松朝彦,水口俊典,小林重敬,山梨杏菜
目次
- 巻頭言
- 企業経営と経済動向の落差(小栗崇資)
- 特集 土地のありかたを考える─日本を中心に─
- 土地・住まいに関する消費者教育の課題と期待(齊藤広子)
人口減少・高齢化社会において住宅の価値はどうなるのか──国際比較をつうじて──(清水千弘)
コラム1 都市計画と用途地域(齊藤真悟)
地価という名の幻(平松朝彦)
土地利用の計画制度の現状と改革の必要性──都市計画制度を中心として──(水口俊典)
日本の土地の現状と今後の課題に向けて(小林重敬)
コラム2 国際土壌年──元気な暮らしは元気な土から!──(山梨杏菜) - 時々再録
- 就活のウソホント(白水忠隆)
- 海外情報
- 英コーペラティブ・グループとフィンランド生協連の2015年中間決算の概要(佐藤孝一・藤井晴夫)
「ガイダンス・ノート」に関する議論より──ICAパリ国際研究会議報告(3)──(鈴木 岳) - 研究と調査:(第2期)生協論レビュー研究会(3)
- 『生協運営資料』掲載文献からみる人材像の変遷(石澤香哉子)
- 本誌特集を読んで(2015・9)
- (鈴木 賢・原 秀一)
- 新刊紹介・私の愛蔵書
- 佐藤幸治 著『世界史の中の日本国憲法』(今野順夫)
小松健一 著『シャッターはこころで切れ』(小平田 昇) - 研究所日誌
- アジア生協協力基金一般公募助成事業のご案内
- 2015年度第10回「表彰事業」受賞式のご案内
- 2015年度(第13回)生協総研賞・助成事業の対象者を決定しました
- 2015年度第5回公開研究会のご案内