生活協同組合研究 2015年4月号 Vol.471
特集:生協の共済事業 最新事情
保険より共済が優れているところとしては,その「掛金の安さ」や「商品のシンプル性」を挙げる声が大きいように思う。しかし昨今では,これらを意識した商品を販売する保険会社がいくつも現れ,保険料が共済掛金と伍するものも増えている。一方で,共済団体の取り扱う商品バリエーションは増え,提供するサービスレベルも高くなってきている。サービス産業生産性協議会が実施した2014年度の「JCSI(日本版顧客満足度指数)調査」の生命保険分野においては,複数の生協共済団体が上位にランクされた。
このような環境の変化は,保険と共済の利用者同質化に繋がってきているのではないだろうか。そこで,今回の特集では「そもそも保険と共済は何が違うのだろう?」と根源的な問いかけを踏まえつつ,生協共済の現況を紹介し,課題を検討するものである。
江澤氏の論考には,共済団体は組合員組織であり,そのアイデンティティは組合員参加にあることが明瞭に記されている。
根本氏からは共済と保険の差異について,そして共済と保険それぞれの持つ特性を丁寧に考察していただいている。
消費者団体でご活躍しておられる坂本氏からは,消費者の視点から共済を考察していただいた。
崔氏からは韓国における協同組合共済の変革について,韓米FTAの発効が韓国の4大共済に与えた影響を含めた報告をいただいた。
また,三共済団体の推進管掌者にお集まりいただいての座談会記事からは共済推進の現状と課題を読み取っていただければと思う。コープあきたの共済推進にかかるインタビュー記事からは,現場の雰囲気を感じていただければ幸甚である。
本誌としては2012年5月号「東日本大震災と生協の共済」以来となる共済の特集であり,実際の共済で日々業務に携わっておられる方々にとっても随所に参考になる知見が含まれていると思う。是非,ご一読いただければ幸いである。
(齊藤真悟)
主な執筆者:江澤雅彦,根本篤司,倉田秀昭,伊藤良好(聞き手:大坪省三・齊藤真悟),岡田 太,阿部田克美,田中隆幸,和田長太郎,坂本綾子,崔桓碩
目次
- 巻頭言
- 現場の感触(生源寺眞一)
- 特集 生協の共済事業 最新事情
- 生協共済と組合員参加(江澤雅彦)
- 共済と保険の相違(根本篤司)
- コープあきたの共済事業の取り組み(倉田秀昭・伊藤良好 (聞き手:大坪省三・齊藤真悟))
- 座談会「生協共済の推進について」(岡田 太・阿部田克美・田中隆幸・和田長太郎)
- コラム1 消費者視点で考える共済(坂本綾子)
- コラム2 韓国の共済事業をめぐる新たな変化(崔桓碩)
- 海外情報
- コープアドリアティカ(イタリア)の社会的活動報告書(宮沢佳奈子)
- 被災地からの報告
- 2014年初冬・志津川事情を語る③(佐藤俊光,高橋源一 (聞き手:鈴木 岳))
- 時々再録
- ピケティ・ブームの周辺(白水忠隆)
- 本誌特集を読んで(2015・2)
- (福田恵介・長谷川誠司)
- 新刊紹介
- 内藤正典 著『イスラム戦争 中東崩壊と欧米の敗北』(天野晴元)
- 伊勢﨑賢治 著『本当の戦争の話をしよう 世界の「対立」を仕切る』(久保典子)
- 研究所日誌
- 生協総研賞・第11回助成事業研究論文集を刊行しました
- 公益財団法人生協総合研究所第1回公開研究会