生活協同組合研究 2014年4月号 Vol.459
特集:電力自由化と再生可能エネルギー
生協総合研究所は,昨年3月に「生協の電力事業に関する提言」をまとめた。それから一年,生協の電力事業がどれだけ進んだか,提言の中でも触れられた再生可能エネルギーの急速な拡大のためにどのような課題があるかを検討するのが,今号特集の狙いである。
日本経済新聞社の松尾氏には,経済専門紙のエネルギー担当として,生協の電力事業を取材の上,率直に課題などを指摘してほしいとお願いした。論文では,現在進められている電力自由化の概要と関連業界の動きが簡潔にまとめられている。電力自由化が本来の目的通り進めば,消費者の存在感が高まり,そうした消費者の好み,生活様式の手掛かりとなるデータを活用しやすい生協は先行できるとの指摘に注目したい。
二村論文では,提言で提起された課題の進捗状況や生協法と発電事業についての厚生労働省との調整内容が紹介されている。松尾論文で指摘された消費者の存在感が高まり,「電力が選べる社会」にするために,電力事業で得られる情報,知見を消費者に還元していきたいと結ばれている。
ところで,再生可能エネルギーは地域資源でもある。恥を忍んで言えば,小磯論文が言及した,FIT制度の法律の目的が,地域の活性化にもあることを知らなかった。再エネを持続的に普及拡大していくには,資源のある地域の活性化が欠かせない。小磯論文は,地域政策の視点から,柴田論文は「環境問題」としてではなく,ものづくりの視点からの論考である。これらの指摘は,生協が電力事業に取り組む際に考えておく必要がある。
木村論文は,ドイツのエネルギー政策,電力システム改革などについて最新のデータを基に紹介している。ドイツの再エネについて日本に伝わる情報は断片的だが,かの国がいかに長い時間をかけて着実に取り組んでいるかがよく理解できる。
振り返って,日本では再エネの長期的な導入目標さえ示されないことの問題が,今号のほとんどの論文で指摘されていたのが注目される。
(白水忠隆)
主な執筆者:小磯修二,松尾博文,二村睦子,木村啓二,柴田友厚,白水忠隆
目次
- 巻頭言
- 分母と分子(生源寺眞一)
- 特集 電力自由化と再生可能エネルギー
- 地域からのエネルギー政策(小磯修二)
- 電力自由化で増す生協の役割(松尾博文)
- 生協の電力事業(二村睦子)
- ドイツのエネルギー大転換への挑戦──再生可能エネルギー,脱原発,電力システム改革について──(木村啓二)
- 再生可能エネルギーによる地域経済の活性化に向けて(柴田友厚)
- コラム 青森のドンキホーテ──風車に挑んだ自動車整備会社──(白水忠隆)
- 時々再録
- 二つの原発会見(白水忠隆)
- 海外情報
- ソウル・グローバル社会的経済フォーラム(GSEF),及びiCOOP生協とクラスターの参加報告(鈴木 岳)
- 本誌特集を読んで(2014・2)
- (加藤隆寛・佐藤岩夫)
- 新刊紹介
- 全国大学生活協同組合連合会など編著『大学生が狙われる50の危険』(白水忠隆)
- 研究所日誌