生活協同組合研究 2014年1月号 Vol.456
特集:現代大学事情―いまどきの大学と学生
1975年,大学授業料は36,000円,入学金は50,000円(私立大の場合:同182,677円,95,584円)であった。国立大学学費はこれまで2年ごとに改訂が行われ,2013年は同535,800円,282,000円(私立大の場合,2012年:同859,367円,267,608円)となっている。実に国立大で9.5倍,私立大で4.1倍である。皆さんの入学時期には,いくらほどだったろうか?また,現在,子供を大学に通わせている父母の方の負担は? 大学の学費だけでなく,今,大学・学生も大きく様変わりしている。今回の特集は「現代大学事情-いまどきの大学と学生」と題して,そうした大学・学生の変化と現状を探ってみた。
「現代学生の意識と価値観-25年間の調査から-」は,関西大学の片桐新自氏に1990年代から2000年代にかけて大きく変わった学生の意識や価値観について,25年にわたる調査からその特徴を報告いただいた。その意識と価値観は,学生の現状を知るだけでなく,生協などに就職する今の新入職員ともかさなるものがあり,意識や行動をみる上で非常に参考になる。
また,前九州大学理事・事務局長の本木章喜氏,関西国際大学学長の濱名篤氏には,それぞれ「中教審答申が求める大学の将来-危機に立つ大学教育の質の保障-」「日本の高等教育の課題と『ハイ・インパクト・プラクティス』の可能性」と題して,大学進学率が50%に達した今日の高等教育の中で,一つは,学士課程の質の向上に向けた諸策とは何か,また,二つ目には,教育の成果に対する社会の強い要請や大学を中途で退学する学生の対応など多様な学生に対する教育方法はいかなるものかなど,入口(入試)改善,初年次教育の普及,出口(卒業)の厳格化,就職対応など,現代の大学のかかえる諸課題について縦横に語っていただいた。さらに,東京大学大学総合教育センターの小林雅之氏には,「進学の格差拡大と学生支援のあり方」と題して,保護者調査から見られる所得と進学率の傾向,各国の学生支援の状況をわかりやすく報告いただいた。
そして,最後にこうした大学・学生の変化に対応し,大学内でユニークな存在である大学生協は,まさに今,その対応や課題認識をどう考え,どう行動しているのか,全国大学生活協同組合連合会の専務理事である福島裕記氏にインタビューを行い,お話しいただいた。一言でいえば,大変厳しい経営環境の中で,学生,院生,留学生,教職員と一緒になって,大学に広く深く活動を広げ,大学にも学生にも“頼りになる存在”になるべく日夜努力している姿を語っていただいた。特集ページ最後には,それを証明するような大学生協の大学や学生に対する具体的な取り組みや調査結果もコラム形式で掲載している。
大学進学率は2010年OECD調査によると,OECD平均が62%,1位はオーストラリアで96%,日本は51%で22位である。少子化だからこそ進学率はまだまだ伸びる傾向にあるだろう。日本の高等教育,大学,学生がどうなってほしいのか,この特集を機会にぜひ一度考えてみてはいかがでしょう。
(松本 進)
主な執筆者:片桐新自,本木章喜,濱名 篤,小林雅之,福島裕記(聞き手:松本 進),白水忠隆,編集部
目次
- 巻頭言
- 生協総研ビジョン・中期計画つくりについて(芳賀唯史)
- 特集 現代大学事情─いまどきの大学と学生
- 現代学生の意識と価値観──25年間の調査から──(片桐新自)
- 中教審答申が求める大学の将来──危機に立つ大学教育の質保証──(本木章喜)
- 日本の高等教育の課題と「ハイ・インパクト・プラクティス」の可能性(濱名 篤)
- 進学の格差拡大と学生支援のあり方(小林雅之)
- 全国大学生協連専務理事へのインタビュー(福島裕記(聞き手:松本 進))
- コラム1 収入が多くても生活が苦しい? 収入額の大きさより収支内容で実感する<楽><苦>なくらし(編集部)
- コラム2 大学生協の新しい!学生支援事業(白水忠隆)
- コラム3 新入生と保護者の大学生活への不安に応える大学生協の新学期,新入生サポートセンターの取組み(編集部)
- コラム4 大学生協の保障制度からみた学生の病気・ケガ・事故の実態(編集部)
- 講演録
- 第2回憲法改正学習会 今,憲法の何が,どう変えられようとしているのか?(藤原真由美)
- 被災地からの報告
- 被災地支援──子ども達の心をサポートする──(永田陽子)
- 海外情報
- 第8回国際サードセクター学会アジア太平洋大会に参加して(山崎由希子)
- モンドラゴン,ファゴール家電グループの倒産と当面の教訓(石塚秀雄)
- 本誌特集を読んで(2013.11)
- (原 強・山田英郎)
- 研究所日誌