刊行物情報

生活協同組合研究 2013年11月号 Vol.454

特集:消費者教育推進法をめぐって─消費者基本法まもなく10年─

 本特集は,2012年12月に施行された消費者教育推進法の意義と課題を,第一線の専門家により多角的に論じていただいたものである。それとともに,2004年に施行された消費者基本法が来年10周年を迎えるにあたりその成果と課題を踏まえること,またかかる最大の成果として,使命を「消費者行政の『舵取り役』として,消費者が主役となって,安心して安全で豊かに暮らすことができる社会を実現する」とする消費者庁(2009年発足)の近況にも当然触れる必要を感じた。

 そのため,東奔西走のなかを縫って阿南久消費者庁長官に無理を言ってお願いし,実現したものが本号特集の劈頭を飾るインタビューである。聞き手には,2004年に創設された消費者機構日本(COJ)の専務理事を務め続けておられ,制度にも実態にも深く精通されている磯辺浩一氏にお願いした。特集のテーマのみならず,阿南氏が昨年からどのようにトップとして活動されたのか,さらに消費者庁の現在の到達点と今後の課題を見る上でも,最新情報として参考になるものと思う。

 西村論考では,教育推進法へ至る経緯と意義・概要,地域における主体間連携,基本方針と消費者教育推進会議,消費者の権利と消費者市民社会などを基調論文として記していただいた。

 野々山論考は,自覚的消費者の育成の必要性,消費者教育推進法の注目点に焦点を当てている。ただ,教育推進法の実践はこれからであって,消費者市民社会について消費者が正しく理解し,そのための消費者市民教育の充実を強調されている。

 島田論考は,グローバル化と消費者という観点から,持続可能な消費と生産の動向,さらに消費者市民社会の意味を論じる。そして,一人の消費者にできることとしての「重要な7つの行動例」を独自に提示されている。

 斎藤論考では,長年生協運動の指導者として活躍され,かつ生協の歴史編纂も手がけてこられた幅広い視点から,戦前から今日までの消費者運動と生協との関連を,時系列にかつ要点を押さえて概説されたものである。

(鈴木 岳)

主な執筆者:阿南 久(聞き手:磯辺浩一),西村隆男,野々山宏,島田 広,斎藤嘉璋

目次

巻頭言
生協の連邦的分権制──スイスの協同組合から学べること──(麻生 幸)
特集 消費者教育推進法をめぐって─消費者基本法まもなく10年─
消費者庁長官へのインタビュー(阿南 久 (聞き手:磯辺浩一))
消費者教育推進法の意義と消費者市民社会(西村隆男)
消費者教育推進法と求められる消費者の対応(野々山宏)
グローバル化時代と消費者教育推進法(島田 広)
生協と消費者運動/略史(斎藤嘉璋)
講演録
自民党の日本国憲法改正草案について考える(阪口正二郎)
研究と調査
生協共済研究会2013年度海外調査──韓国農協を訪問して──(松本 進)
スペイン協同組合事情 第3回
スペインにおける連帯経済の発展(廣田裕之)
海外情報
コーペラティブ・グループ(CG)の2013年度中間決算(藤井晴夫)
被災地からの報告
福島の生産・流通現場の現在(宮﨑達郎)
本誌特集を読んで(2013.9)
(大石芳裕,松岡由季)
新刊紹介
橘木俊詔 著『「機会不均等」論』(齊藤真悟)
研究所日誌