生活協同組合研究 2013年4月号 Vol.447
特集:生協の電力事業研究会を終えて
東京電力福島第一原子力発電所の事故以降,消費者の間で電力・エネルギー問題への関心が急速に高まった。生協での論議も高まった。2012年6月,「節電・省エネおよび再生可能エネルギーの普及にかかわって生協にできることを具体的に検討し提言する」ことを目的に設置された「生協の電力事業研究会」は3月に提言をまとめて終了した(報告書は4月初旬刊行)。本特集では生協の電力事業に関する期待と課題を提起するとともに,欧米の協同組合の先進事例を紹介する。
研究会の共同座長をつとめていただいた麻生幸氏(千葉商科大),天野晴子氏(日本女子大)による座談会は,電力・エネルギーに対して消費者市民・生協がどうかかわっていくかという問題に関して,研究会での討論,北海道の市民風車,北九州のスマートシティ,カリフォルニアの電力協同組合などの視察を踏まえて,今後の生協電力事業の課題を提起している。
環境エネルギー政策研究所の船津寛和氏は研究会に専門家として関与していただいた。氏の論文では,世界で始まっているエネルギーのパラダイムシフト(大規模集中型から分散型へ,原子力・化石燃料から再生可能エネルギーへ,大企業エネルギー事業から市民事業へ,供給側から需要側へ)の状況を解説し,生協の電力事業への期待を書いていただいた。
山崎論文は昨年10月に行った米国カリフォルニア州北部の再生可能エネルギー事業の視察を踏まえて,アメリカの電力制度と再生可能エネルギー導入・利用促進政策の概要を示し,地方公営事業者,農村電力協同組合,コミュニティ・チョイス・アグリゲーション(地方自治体が地域内の住民や企業を代表して電力を購入する組織)の調査報告と太陽光発電協同組合におけるインタビュー記録を掲載している。
拙稿は10月に行った欧州の再生可能エネルギー視察を踏まえて,EUのエネルギー政策の動向と再生可能エネルギー協同組合ネットワークの活動について解説し,ベルギーのエコパワー協同組合,デンマークのミッデルグルンデン風力発電協同組合と地域暖房協同組合の実践を紹介している。
(栗本 昭)
主な執筆者:麻生 幸,天野晴子,金子隆之,林 薫平,山崎由希子,船津寛和,栗本 昭,鈴木 岳,大津荘一
目次
- 巻頭言
- 変わる社会,異なる社会(生源寺眞一)
- 特集 生協の電力事業研究会を終えて
- 生協の電力事業研究会を終えて──座談会──(麻生 幸・天野晴子・金子隆之・林 薫平・山崎由希子)
- 世界で始まっているエネルギーのパラダイムシフトと生協への期待(船津寛和)
- ヨーロッパの再生エネルギー政策と協同組合電力事業(栗本 昭)
- 米国カリフォルニア州北部における電力事業調査報告(山崎由希子)
- コラム1 内外の電気料金事情(鈴木 岳)
- コラム2 イタリアの電力事情とその周辺(大津荘一)
- 海外レポート
- IHCO医療生協フォーラム参加報告(山崎由希子)
- 本誌特集を読んで
- (賀川督明・賀川一枝・小林正美)
- 私の愛蔵書
- 北大路魯山人,平野雅章編『魯山人味道』(鈴木 岳)
- 研究所日誌