刊行物情報

生活協同組合研究 2012年11月号 Vol.442

特集:男女平等参画とくらし・生協

 私(女性)が男女の格差について,統計的な数値を説明していると,個人(自分)の立場や経験と混同して,「女性の差別なんかしてない」「差別なんてもうないだろ?」という反応が男性からよく見られる。学習会では,「近本の話聞くと,悪いことしてるような気がする」と何度か男性の反応をいただいた。私は「男性も理解へ,改善アクションへのエンパワメントできれば良いな」と最近では特に考えて情報発信するようになった。先進国でも底辺に近い日本のジェンダー指数(男女の格差がどのくらいかを示す指標数値)をみていると,数値は改善どころか,横ばいまたは下落傾向である。

 今号の特集は,都市部の女性の働き方にようやく変化がみえてきたこと,価値観も変化していることを契機に,幅広い視点から論考をいただいた。都市部については,三浦展著『東京は郊外から消えていく!』(2012年)によれば,企業戦士と専業主婦の夫婦の好んだ「郊外の一戸建てで子育て」というモデルはもはや少数派だという。首都圏の人口動態が細かい年代別地域別のデータ分析で予測されているが,夫婦共働きがしやすい便利な場所,つまり保育所や買い物のアクセスにあまり時間がかからない地域に人口が集まってきているという。『日本経済新聞』(2012年10月22日)では「共働き世帯が主流に」というタイトルで共働き世帯の割合が過去最高の55.3%になったと紹介している。特に団塊ジュニア世代以降で子育て期も夫婦で働く傾向は現れてきたようだ。このような現代的な潮流から,団塊世代とそれ以降10年くらいの男性が事業組織のリーダー層である生協の文化そのものが,どうやら古びてみえる。

 ここでは,第7回生協総研賞・研究賞を受賞された岩間氏の論考で世界と日本の「主婦」が変化していることをまず把握する。そして生協が男性によって構築されたことを傍証するように,そのことで組織変革に苦労を重ねて来られた佐藤氏の提言の重要性を理解いただきたい。また,女性運動から生まれた韓国の生協(朴氏論考)で,女性職員が活躍し,日本とは異なる組織作りや,運動との葛藤を経験している状況を垣間見ていただきたい。日本の人口は減少し始めており,縮小社会に適する生活の変化は,地すべり的に進行すると考えられる。これまで日本の生協が好んだ「手作り」「食育(伝統食に偏ったもの)」は主婦・母親向けであり,逆にいうと夫・父親を疎外してきた。これからは吉田氏や蟹江氏の分析のように,夫婦共働きが普通である国にふさわしい人事制度,スマートでバランスのとれる食事を基本にした事業構築,初心者からベテラン向けの多様な食育プログラム(北欧はすでに開発している),消費者・組合員の買い物アクセスの変化に対応する物流,など視点を拡げていく一助となれば幸いである。

 なお,震災支援の現場では「家父長制が噴出した」と女性からよく聞くが,実態調査から男性優位のあり方を浮き彫りにした建井論考も併せてお読みいただきたく思う。

(近本聡子)

主な執筆者:岩間暁子,佐藤利昭,朴 賢淑,蟹江教子,吉田大樹

目次

巻頭言
国の消費者行政における消費者委員会の位置づけの変化(松本恒雄)
特集 男女平等参画とくらし・生協
専業主婦は今後どうなるのか──ジェンダー論と階層論の観点から──(岩間暁子)
マネジメントの改革を進め,職場の男女共同参画の推進を(佐藤利昭)
生活協同組合をとおした学びと「参加」から「参画」へ──韓国女性民友会生協を事例として──(朴 賢淑)
食事の世話は母親の仕事?(蟹江教子)
父親の家事・育児への参画と楽しい食生活(吉田大樹)
コラム1 「女性力」が日本の将来を支える
コラム2 イタリア・レーガコープのジェンダーの取り組み
コラム3 震災と宮城の女性
支援活動から見えてきたもの③
震災対応状況調査から見えたジェンダー視点に立った支援のあり方(建井順子)
残しておきたい協同のことば 第20回
ジェームス・P・ワーバス(鈴木 岳)
本誌特集を読んで
(清水文清・北村俊之)
新刊紹介
ジャン=ルイ・ラヴィル著『連帯経済』(山崎由希子)
研究所日誌