刊行物情報

【新刊のご案内】21世紀の生協の共済に求められるもの

 本書は、『生協の共済-今、問われていること―』(2008年、コープ出版)の続編であり、生協共済研究会(第4-5期)の報告書である。生協共済研究会は、共済における生協らしさをテーマとした研究を深めていくため、全労済、全労済協会、コープ共済連、大学生協連が委託研究費を出し合い公益財団法人生協総合研究所を事務局に、開始されたものだ。

 2006年4月生協共済研究会が発足して以降、一部参加者の交代があったものの、前書の著者の多くが本書を執筆している。参加者の生協共済の現状や直面する課題について理解が進んだからであろうか、それぞれの研究領域の観点から、新たな論点の提示や示唆に富む考察が多くみられるように思われる。可能であれば、前書と読み比べていただければ幸いである。

 本書のテーマである、「21世紀の生協共済に求められているもの」について、各参加者の論点または課題は、おおむね次のように整理できるだろう。もちろん、これらは広範囲におよぶ生協共済の課題、要請または期待の一部を表すにすぎない。

 さらに、参考編として、ファイナンシャルプランナーの豊富な経験をもつ内藤真弓氏による、「共済が人々の暮らしにおける楔のような役割を果たせないものか」という提言も、生協共済の本質的な課題として受け止める必要がある。全労済企画部が翻訳された「国際協同組合保険連合(ICMIF)によるサステナビリティ・レポートの概要」は、諸外国での取組みが簡潔に紹介されており、大変興味深く、参考になる。鈴木岳氏による「共済(生協共済)に関連する文献レビュー」は、生協共済(研究)の動向を知るうえで有用であり、課題や問題意識が的確に抽出されている。

 “生協の共済”はその特質とアイデンティティを生かし、加入者、契約件数を大きく伸長させてきた。厳しい環境に直面している今、さらに発展していくには何が必要か?長期ビジョンや課題は何か?を探る論考集となったと考える。

公益財団法人生協総合研究所 生協共済研究会=編著
INBN978-4-87332-305-3
A6判・並製・290頁
2011年6月16日発行予定
定価(本体1,300円+税)

主な目次

生協共済の特徴をふまえた連合会ガバナンスの構築と実効性の向上
岡田 太(日本大学商学部准教授)
消費者や利用者のためのADR(裁判外紛争解決制度)の導入
甘利公人(上智大学法学部教授)
緩やかな危険選択という共済契約の独自性の維持
千々松愛子(一橋大学大学院法学部研究科特任講師)
協同組合の外部資本導入の問題点
福田弥夫(日本大学法学部教授)
マイクロクレジットへの積極的関与など生協共済らしい独自の資産運用
江澤雅彦(早稲田大学商学学術院教授)
社会的責任活動を通じた「共済らしさ」を強みとする差別化軸の明確化
恩蔵三穂(高千穂大学商学部教授)
優位性と独自性を発揮するための共済サービスの付加価値の向上
宮地朋果(拓殖大学商学部准教授)
アルペン型保険に属する生協共済の高齢社会における戦略の選択
梅田篤史(駒澤大学大学院経営学研究科研究生)
生協共済に対する組合員の相互扶助意識の実態と特徴
山崎博司(九州産業大学商学部准教授)