蓮見音彦先生を偲ぶ
蓮見音彦先生の訃報に接し、謹んで哀悼の言葉を申し述べます。
先生は2000年5月から2008年5月まで8年間にわたり生協総研の理事長を務められました。ほぼ同期間、専務理事であった私は、先生から多くのご指導をいただいて総研の運営を進めることで、職責を全うできたことをあらためて感謝申し上げます。
初代理事長の大内力先生から、「もう私も80歳になるのだから、早く後任理事長を決めてほしい」と求められ、東京学芸大の学長室に総研理事長就任のお願いに伺ったことを、思い出します。
蓮見先生には、生協総研の設立発起人であった故福武直先生が1989年に急逝された際、(社会学関係者と都民生協で構成した)葬儀実行委員会・追悼文集刊行会で面識を得ました。福武先生は都民生協の理事長であられましたので私は常務理事として委員会に参加させていただいたのです。その時同席された方々から、蓮見先生は福武先生の衣鉢を継いで農村社会学を地域社会学に発展させたのだ、とお聞きしました。
その後、福武家からの遺贈により、10年間にわたって表彰事業を進めた福武直賞の運営の任に当たられました。
このような縁から蓮見先生に総研理事長をお願いしたのですが、先生は「福武先生の縁なら引き受けないわけにはいかないな」と快くお受けいただきました。
理事長就任一年後に福武賞の終了を引き継いだ形で生協総研賞(出版表彰と研究助成)が発足しました。福武賞の事務局を総研が引き受けていたこともあり、順調なスタートでした。先生をはじめ審査員の方々には短い期間に候補作を査読いただき、近くにいる私などは、研究者の負担をあらためて感じさせられました。
当時生協総研では、新しいレベルで生協研究を発展させたいと「生協学」を提唱し、「現代生協論の探求」の刊行を進めましたが、先生はこれに賛意を示されて、自ら同書の序章「『生協学』の課題と方法」を執筆され、探求の道筋を描いていただきました。ここで先生は、生協学は総合学であること、実践的な学問であること、「協学連携」が必要であることを提唱されています。
理事長在任中、先生の穏やかなお人柄に甘えて無理なお願いをしたことも多く、至らなかった私はただただ感謝の気持ちでいっぱいです。
今も柔らかな物腰と笑顔が頭に浮かんでいます。
安らかにお休みください。
藤岡武義(生協総研元専務理事)