刊行物
生活協同組合研究 2026年6月号 Vol.605
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●食料の持続可能な消費と生産の均衡点を求めて

本特集では持続的な消費と生産の均衡点と題に含めているが,ここでの「持続的な」が意味するところは主に「価格」をキーワードとした経済的な持続可能性である。
近年では食料の急激な物価高騰が社会問題として指摘され,2人以上の世帯のエンゲル係数は2025年度には28.8%と1980年度以来の水準となったことが報道された。その一方で,生産サイドでは,農畜水産業の担い手不足が長期間にわたり課題となっていた。農畜水産物の価格が高くなれば,消費者の生活は苦しくなり,その一方で安くなれば,生産者の経営は厳しくなる。農畜水産物がどのような価格であれば,生産者・消費者双方にとって持続的なものになるのか,これは大きな政策課題となっている。2023年より農林水産省が「適正な価格形成に関する協議会」を開催するようになったのも,こうした状況を踏まえてのことである。
本特集では,生産者・消費者双方の観点から,この課題についての知見を深める論稿を集めている。
冬木稿では令和の米騒動の背景にあった事情に触れつつ,近年の農畜水産物の適正価格に関する議論の動向や,その結果成立した食料システム法の展望について考察いただいている。まず,本稿をご覧いただくことで,近年の適正価格の議論の状況や政策的な展望について理解することができるだろう。
木下稿では農産物価格の高騰が生産者の収入に結び付いているのかを各種の統計資料を用いながら詳細に解説いただいている。久我稿では総務省「家計調査」のデータを中心に,食費を含めた消費者の生活費の動向を解説いただいている。感情論ではなく,数値データから客観的に生産者と消費者の状況を整理することが,今後の農産物価格の議論を理解する上で,重要な知見となるだろう。
須田稿では適正価格の議論において参照されることが多いフランスのエガリム法について,その内容や効果について整理いただいている。法律的な整備が進むフランスにおいてもこの農産物の適正価格における議論は一筋縄ではいかず,極めて困難な課題であることがわかる。宮﨑稿では生協産直における価格の位置づけについて確認しながら,生産者と消費者の間の農産物価格に関する情報の非対称性の解消の重要性を指摘している。
食料は,生きる上で欠かせない財であり,その価格は人々の生活に強く影響する。誰にとっても必要な財であり,実質全ての人が利害関係者となり得ることから,その価格の取り扱いにおいて,簡単な「正解」というものを見出すことは難しい。ただし,議論から逃げてはいけない。近年の物価高騰の影響が目立ち,短期的な対応が求められるのも事実であるが,今回の経験を踏まえ,食料価格の形成についての知見を深めることは,長期的な目線においても持続可能な食料生産の成立において重要であろう。
(宮﨑 達郎)
主な執筆者:冬木勝仁,木下 徹,久我尚子,須田文明,宮﨑達郎
目次
- ●巻頭言
- その沈黙が「壁」になる前に──「独りぼっち」の時代における教育──(湯本浩之)
- ●特集 食料の持続可能な消費と生産の均衡点を求めて
- 農畜水産物の適正価格と食料システム法(冬木勝仁)
- 近年の食料価格の高騰は生産者の収入に結び付いているのか(木下 徹)
- 物価高が変えた食卓と家計──データが示す暮らしの実像──(久我尚子)
- 座礁したフランス・エガリム法(須田文明)
- 生協産直は「価格」にどう向き合うべきか(宮﨑達郎)
- ●研究と調査
- アンケートをはじめとした調査活動における留意点(宮﨑達郎)
- ●本誌特集を読んで(2026・4)
- (田島健一・中島智人)
- ●新刊紹介
- 今井照著『自治体は何のためにあるのか─〈地域活性化〉を問い直す─』(三浦一浩)
- ●研究所日誌
- ●生協総研賞「第24回助成事業」の応募要領(抄)
