刊行物

生活協同組合研究 2026年5月号 Vol.604

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●地域包括ケアの現在地~持続可能な地域共生社会を目指して

 日本の介護保険制度は2000年に創設され,継続的な改善が図られてきた。近年では介護が必要になっても住み慣れた地域で暮らし続けられる地域包括ケア社会を目指して進んでいる。

 各地の生協でも福祉事業として,あるいは社会福祉法人を設立して,介護事業に携わっている。『生活協同組合研究』2026年5月号では2025年10月号に続いて「介護」をテーマに選んだ。

 本誌では,厚生労働省で制度立案から携わってきた香取照幸氏(兵庫県立大学大学院特任教授)に,介護保険制度のこれまでと今後の方向性について,解説いただいた。

 高野龍昭氏(東洋大学福祉社会デザイン学部教授)には,人口減少局面にある介護保険制度が直面する課題を踏まえ,改革の方向性について,丹念に説明いただいた。

 伊藤優子氏(龍谷大学社会学部教授)には,人員不足にあえぐ介護業界の現状について,公的に決定される報酬水準が他産業より低いという課題を指摘しつつ,解決に向けて「職種定着」という新たな視点を提起いただいた。

 石山麗子氏(国際医療福祉大学大学院教授)には,地域包括ケアシステムとケアマネジメントの現状と課題について,考察いただいた。

 角能氏(島根県立大学地域政策学部准教授)と山根純佳氏(名古屋大学大学院環境学研究科教授)にはケアマネジャーを対象としたアンケート調査にもとづく報告をいただいた。

 「生協10の基本ケア」を生み出した社会福祉法人協同福祉会では,東浦秀己理事長,横田朋子人材開発部長,石塚由美子あすなら苑長に利用者の人格を尊重した介護の実践についてお話をお聞きした。

 一般社団法人全国コープ福祉事業連帯機構 山際淳常務理事には「地域密着型サービス」が2040年に向けて介護保険制度を持続可能としていく鍵であると熱弁いただいた。

 今回の特集は一冊で,介護保険制度の歴史,現状と課題,改革の方向性を俯瞰でき,現在地を確認しながら進むべき道を示す内容になったのではないかと自負している。タイトルを「地域包括ケアの現在地~持続可能な地域共生社会を目指して」としたが,協同福祉会における介護の実践は,超高齢社会における「一筋の光」を示してくれているのではないだろうか。

 生活協同組合という組織のなかで介護事業に携わる職員が,本誌を手に取っていただいた時,少しでも元気が出る一文を見つけていただければ本望である。

(西尾 由)

主な執筆者:香取照幸,高野龍昭,伊藤優子,石山麗子,角 能,山根純佳,東浦秀己,横田朋子,石塚由美子,山際 淳,西尾 由

目次

巻頭言
台湾の鶏卵売場から食と農の課題を考える──エンリッチドケージとケージフリーの競争──(大木 茂)
特集 地域包括ケアの現在地~持続可能な地域共生社会を目指して
介護保険制度のこれまでと今後の方向性(香取照幸)
人口減少局面における介護保険制度の課題(高野龍昭)
介護人材確保をめぐる構造的課題と「職種定着」の視点(伊藤優子)
地域包括ケアシステムとケアマネジメントの現状と課題(石山麗子)
訪問介護サービスの縮小と利用者世帯の生活の質──都市と地方におけるケアマネジャーと世帯の負担をめぐって──(角 能・山根純佳)
“10の基本ケア”で“人間の尊厳”を護る~ “オムツをしないケア”は大変だけれども!? ~
(東浦秀己・横田朋子・石塚由美子(聞き手:西尾 由))
地域密着型サービスの普及推進に向けて~社会保障審議会介護保険部会 山際委員に聞く~(山際 淳(聞き手:西尾 由))
本誌特集を読んで(2026・3)
(遠藤智栄・大谷 学)
新刊紹介
下山保著『飢えと子どもドロボー団』(三浦一浩)
研究紹介
地域共生社会の実現を目指した単身世帯等を対象とした生協の関わり方についての調査研究事業
研究所日誌