刊行物
生活協同組合研究 2026年4月号 Vol.603
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市民社会を拡げる手段としての寄付

日本では寄付は低調で,英米などと比べて寄付文化も根付いていないとしばしばいわれてきた。しかし例えば,コンビニの店頭などで募金箱にお金を入れたり,災害時に募金に応じたりした経験を持つ人も多いのではないだろうか。実際,東日本大震災の際には,全国の生協における募金活動で,初年度だけで34億円を超える義援金が集まった。寄付は,私たちが行ってきた身近な行為なのである。
寄付は利他的な贈与であると同時に,社会への参加という意味合いを持ち,NPOをはじめとする多様な市民活動団体の活動を支えるものでもある。NPO法や公益法人制度には寄付税制が組み込まれ,市民が市民の活動を支援・応援する仕組みが整えられてきたほか,近年ではクラウドファンディングなど多様な寄付のあり方が広がっている。
本号では,以下のような形で,寄付をめぐる様々な論点を検討し,寄付のあり方を考える特集を組んだ。関西大学の坂本治也さんには日本における寄付の現状と課題を総体的に論じていただいた。寄付には寄付する側と同時に,受ける側が存在するが,大阪商業大学の中嶋貴子さんにはアカウンタビリティの観点から両者の関係を議論していただき,日本ファンドレイジング協会の小川まきさんには寄付を受ける側であるNPOの立場から取り組み内容やその意味を紹介いただいた。近年広がりを見せている,クラウドファンディングという新しい寄付の形については東京都立大学大学院の會澤裕貴さんにその特徴や課題,展望をまとめていただいた。また,寄付を行う際には寄付対象への共感や信頼が欠かせないが,日本非営利組織評価センターの瀬上倫弘さんにはコープみらい社会活動財団の事例も参照いただきながらこの点を論じていただいた。近年の量的な拡大は注目せざるを得ないものの,様々な点から見て疑問符が付く仕組みといえるふるさと納税については,早稲田大学の小原隆治さんに,特に自治の仕組みとの関係からその問題点を明確に示していただいた。その他,これも近年注目される遺贈寄付について遺贈寄附推進機構の齋藤弘道さんにコラムをお寄せいただいたほか,生協らしい食品のフードバンクへの寄付の取り組みについてパルシステム神奈川の小澤一郎さんに紹介いただいた。
本特集を通じて,寄付という行為を少しでも身近に感じていただき,生協の現場などでの取り組みのヒントにしていただければ幸いである。
(三浦 一浩)
主な執筆者:坂本治也,中嶋貴子,小川まき,會澤裕貴,瀬上倫弘,小原隆治,齋藤弘道,小澤一郎
目次
- ●巻頭言
- VUCAの時代におけるわが国の食料安全保障の課題(中嶋康博)
- ●特集 市民社会を拡げる手段としての寄付
- 日本における寄付の現状と課題(坂本治也)
- NPOと市民をつなぐ寄付──寄付の受け手と寄付者の責任──(中嶋貴子)
- NPOはどのように寄付を集めているのか(小川まき)
- クラウドファンディングと寄付(會澤裕貴)
- 寄付を誘引する共感・信頼の制度的媒介構造──コープみらい社会活動財団の事例から──(瀬上倫弘)
- ふるさと納税の現状と問題点(小原隆治)
- コラム1 遺贈寄付の現在(齋藤弘道)
- コラム2 新しい「寄付」のカタチ~パルシステム神奈川の「おもいやりセット」誕生までの物語~(小澤一郎)
- ●本誌特集を読んで(2026・2)
- (港谷征広・植松 誠)
- ●研究所日誌
- ●J-STAGE公開資料の活用状況~利活用が進む生協総研の資料~
- (茂垣達也)
