刊行物
生活協同組合研究 2025年5月号 Vol.592
“超々高齢社会”における生協の可能性
2024年度全国生協組合員意識調査によれば、生協組合員の構成比は60代以上のシニアが過半を占める(図表1)。またシニアほど生協の利用金額も高い傾向が見られ(図表2)、結果として供給高に占めるシニアの購買シェアは約65%に達していると推計される(図表3)。
このような状況からシニアの組合員利用の維持・促進が生協にとって肝要であると考えて今号特集「“超々高齢社会”における生協の可能性」を企画した。
村田稿では人生100年時代において、シニアの特性をふまえて、生協として何ができるのか、基本的な考え方とともに取り組み事例の案を提示いただいた。
坂本稿では65歳を過ぎても働き続けるシニアが増えている現状について解説いただいた。働くシニアの意識として「人の役に立ち、感謝される」「自分が楽しめる、面白いと思える」「職場環境が快適で、ストレスが少ない」など前向きなモチベーションを持っていることが分かる。
小松稿によればシニアの幸福度は他の世代よりも高い。また配偶者や子と同居している方が幸福度は高く、さらに孫を含めた3世代同居世帯のシニアほど幸福度が高い傾向がある。生協組合員の世帯では家族との同居比率が高いため、相対的に幸福度の高いシニアが多いといえよう。
梅津氏には主にシニア女性を対象とした調査結果をふまえた“令和シニア像”について伺った。食欲旺盛でおしゃれ・美容・健康に関心があり、仕事・趣味・ボランティア・推し活へとポジティブにまい進するシニア女性像が、生協組合員の典型的な姿と重なって見えるような気がした。
宮﨑稿では全国生協組合員調査から、70代の組合員世帯において家計の赤字が顕著に増加していることが示された。また「組合員のニーズや声を商品やサービスに反映しているか」に対する高齢層組合員の回答が厳しい評価となっている旨が指摘されていた。
高田氏には日本生協連 通販事業におけるシニア向けの取り組みについて取材した。カタログ媒体『すこやかびと』が奏功してシニアの利用が拡大していることを確認した。
上記の各論考において、シニアの特徴や動向に関する記述が重なる部分も少なくない。
本号特集を読むことにより生協役職員が店舗・宅配事業におけるサービス向上を図り、コープ商品を開発・改善する際のヒントが生まれることを願うものである。
※図表1~3は2024年度全国生協組合員意識調査のデータを元に筆者が作成。(西尾 由)
主な執筆者:村田裕之、坂本貴志、小松 隆、梅津順江、西尾 由、宮﨑達郎、高田雄二郎、茂垣達也
目次
- ●巻頭言
- エイジフレンドリーシティのすすめ(神尾真知子)
- ●特集 “超々高齢社会”における生協の可能性
- 人生100年時代を見据えて──生協の差異化戦略を考える──(村田裕之)
ミドルシニア期からシニア期にかけての就労の実態(坂本貴志)
シニア世代の価値観やライフスタイルの変化とウェルビーイング(小松 隆)
令和シニアの消費行動~ハルメク生きかた上手研究所 梅津順江所長に聞く~(梅津順江《聞き手:西尾 由》)
2024年度全国生協組合員意識調査における高齢層組合員の状況(宮﨑達郎)
シニア向け媒体『すこやかびと』でシニアウェルネス市場を開拓~日本生協連 通販本部の取り組み~(高田雄二郎《聞き手:茂垣達也、西尾 由》) - ●IYC2025の機会に協同組合の価値を再考する(第2回)
- 移住者と市民がつくる街の拠点・生活クラブ『TOCHiTO』(聞き手:柳下 剛)
- ●国際協同組合運動史(第3回)
- 1960年第21回ローザンヌICA大会②(鈴木 岳)
- ●本誌特集を読んで(2025・3)
- (堀口幸子)
- ●新刊紹介
- 松本典子『労働者協同組合とは何か』(三浦一浩)
- ●研究所日誌