刊行物
生活協同組合研究 2024年1月号 Vol.576
世界的な食料危機の中で、持続可能で健康的な食のあり方と生協の役割を考える
COVID-19パンデミックやロシアによるウクライナ侵略は世界的な食料危機を深刻化させている。国内においてはその影響が食料価格高騰や食品不足の不安の高まりとなって現れ、生協組合員を含む人々のくらしは厳しさが強まる一方、食料安全保障をめぐる議論が活発になっている。
このような情勢の中、2023年10月28日、生協総合研究所は「世界的な食料危機の中で、持続可能で健康的な食のあり方と生協の役割を考える」をテーマに第32回全国研究集会を開催した。本号の特集は、この研究集会での講演と質疑応答、パネルディスカッションの内容を編集し収録したものである。
飯山みゆき氏には、今日の食生活が地球環境に及ぼしている影響に思いを致し、食生活パラダイムシフトの必要性について考える機会を、杉中淳氏には、食料・農業・農村基本法制定後の情勢変化について学び、法改正に向けた諸課題について考える機会を、下川哲氏には、持続可能な「食」と「農」に向けて注目すべき動向などについて学び、人間らしさも考慮に入れた対策について考える機会を、それぞれ参加者に提供いただいた。
パネルディスカッションでは、講演者3名に河野康子氏を加えたパネリストが「持続可能で健康的な食のあり方と生協の役割」について意見を交わした。持続可能で健康的な食を「誰もが」享受できる社会の実現は、生協の思いと願いが凝縮されているとは言えとても難しく、特にグローバルな視野で食料問題を解決しようとすると「世界中で知恵を出しあわなければいけない」との指摘もなされた。
半日の研究集会でその解がすぐに見出せるとは思わないが、「すべての人が持続可能で健康的な食生活を享受できる社会のしくみづくり」に向けて日本の生協が採るべき道について、この研究集会を視聴いただいた方にも、本誌特集をお読みいただく方にも、お考えいただく一つの機会になれば幸いである。
(中村 良光)
主な執筆者:中嶋康博、飯山みゆき、杉中 淳、下川 哲、河野康子、藤田親継
目次
- ●巻頭言
- 第10次中計初年度の生協総合研究所のデジタル化の取り組みについて(藤田親継)
- ●特集 世界的な食料危機の中で,持続可能で健康的な食のあり方と生協の役割を考える
- 開会挨拶・解題(中嶋康博)
- 私たちの食生活と人・地球の健康(飯山みゆき)
- 食料・農業・農村基本法の見直しに向けて(杉中 淳)
- 未来に向けた「食」と「農」──これからの課題と可能性──(下川 哲)
- パネルディスカッション「持続可能で健康的な食のあり方と生協の役割」(飯山みゆき・杉中 淳・下川 哲・河野康子・藤田親継(進行役))
- 閉会挨拶(藤田親継)
- ●国際協同組合運動史(第22回)
- 国際協同組合同盟(ICA)1937年第15回パリ大会(鈴木 岳)
- ●本誌特集を読んで(2023・11)
- (和田武広・青竹 豊)
- ●研究所日誌
- ●生協総研賞 第14回表彰事業・選考委員講評
- ●公開研究会「改定議論から考える協同組合のアイデンティティ」(2/1)