海外報告
2017年 ICA国際協同組合研究会議参加報告【近本 聡子】

海外主張の課題と目的

ICA国際協同組合研究会議への参加

日程・訪問地

2017年6月20日~23日 イギリス・スコットランド(スターリング大学)

報告

ICA国際協同組合研究会議への参加(6月20日~23日)

 2017年6月、協同組合の国際的研究会議がスコットランドのスターリング大学で開催された。アジアパシフィック研究会議の理事も勤める、生協総研理事の栗本昭氏とともに日本からはわずか2人であったが近本も参加させていただいた(リンク参照)。

 全体セッションでは、ICA会長のル・ルー氏よりビデオメッセージが流され、イギリス協同組合連合会のエド・メーヨ専務の報告、スコットランドの協同組合であるスコットミッド生協の報告、経済学者のクロード・メナール氏の基調講演として「取引コスト理論から見た協同組合」など世界の協同組合の動向が垣間見られ興味深かった。全体セッションではアジアから唯一栗本昭氏(法政大学大学院)が協同組合研究の現状とグローバルヒストリーを中心に報告をしている。

 論文発表で、筆者のおもしろいと感じたのは、スコットランド地域の「多様な協同組合」のセッションである。

 イギリスでは協同組合を作るのに、日本のような「協同組合法」はないので、多様な協同組合が出現しているが、スコットランドはイギリスの北半分を占めかつ、過疎化も進行しているところから、極北西部地域では人々が地域を支えきれるかどうか、という逼迫した現象があり、日本の秋田県や北海道の北部沿岸地域を思わせる人口減少社会となっている。その中で、地域の産業起こし、学校づくり、イベント協同組合などさまざまな協同組合が結成されて、地域の存続を守っている状況である。

 イベント協同組合と音楽協同組合は連携して、音楽イベントに歌手やプレイヤーを派遣しながら、イベント会場で地域産品を販売するということをしており、当大会の会場にも歌手の若い女性がキーボードの弾き語りをしにきていた。韓国で開催された2015年のG-sefでも、若者のダンス協同組合の1チームが招待されていたが、芸術芸能系組合とセットでイベント協同組合が会場で西海岸の魚介料理を提供していた。ちなみに、夏の名物である小粒でしまった岩ガキをいただくことができた。

 また、同じ北西部の学校協同組合は、豪雨大災害のあと、過疎化で壊滅的に被害を受けた町で公立学校が閉鎖となり、遠くへ通うよりも自分の村で、と地域の大人たちが協同組合を創設して学校認可をとり、運営しているという事例であった。イギリスでは昔から協同組合基金を作り、子どもの頃からの社会的協同・経済協同を体験できる仕組みをもつが、基金ではない事例は珍しい。この取組みは後日深掘りしたいものである。カナダでも青年協同組合・学校協同組合(これは消費者としての若者が学校内に店をもつという取り組み)を見たが、日本でも学ぶべき協同育成の教育システムではないかと感想をもった。近本の報告をしたセッションは最終日で、20人ほどの小さなセッションであったが、「新しい協同のあり方」を討議する部会であった。韓国は法整備がすすみ、市民などによる1万を超える協同組合が出現して活況であることが大変印象に残った。近本はすでに発展して大きなビジネスモデルをもつ生協が、いかに小さな地域を支えるか、という好事例として、コープさっぽろとNPOソーシャルビジネス推進センター、大学、60自治体の連携の取組みのスキーム分析を行い報告した。