海外報告
2015年ICA総会、ICA協同組合研究会議参加報告【栗本 昭】

海外主張の課題と目的

ICA総会、ICA協同組合研究会議への参加と報告

日程・訪問地

2015年11月9日~13日 トルコ・アンタルヤ

報告

①2015年ICA総会

 隔年のICA総会は11月9~13日にトルコ南部のアンタルヤで開催された。この総会では『協同組合のブループリント』(2011~2020年の10ヵ年計画)の中間のまとめが討論されるとともに,『協同組合原則のガイダンス・ノート』,『2015年版世界協同組合モニター』が提出された。

 この際、ICA原則委員会とICA調査委員会理事会も開催された。

 ICA原則委員会には,バンセル氏(委員長:フランス),前田氏(全中萬歳氏代理),ロジャーズ氏(エディター:イギリス),栗本,エル・ユセフ氏(事務局)が参加した。前回議事録の承認,ICA総会でのプレゼンテーション,ガイダンスノート(英語・仏語・西語)の概略,今後の委員会の活動計画について審議を行った。今後の活動計画については,協同組合原則を実践する具体的な事例を集めること,定義や価値についても解説を行うことなど,さまざまのアイデアが出されたが,委員長が提案することになった。

 ICA調査委員会理事会には,ソニア・ノヴコビッチ氏(委員長:カナダ),栗本のほかに,モリス・アルトマン氏,アンソニー・ジェンセン氏(ともにオーストラリア)が参加し,若手研究者プログラムや過去の研究会議の報告書,理事会の拡大について検討を行った。理事会については,アジアからアルトマン氏に出ていただくこと,理事の世代交代を進めることを確認した。また,2016年の研究会議(5月24~27日,スペイン・アルメリア),2017年の研究会議(秋,イギリス・スターリング)の準備を進めることを確認した。なお,2017年にはICA総会はマレーシアで開催されるが,この機会にアジアの研究会議を開催する方向で検討を進めることになった。

②ICA協同組合研究会議

 ICA調査委員会は毎年国際協同組合研究会議を開催しているが,2015年の会議はILO協同組合部との共催で,「協同組合と労働の世界」をテーマに11月8~10日にアンタルヤで開催され,26カ国112名が参加した。11月8日には若手研究者プログラムが行われた。9日の開会セッションではILO協同組合部長のシメル・エシム氏が司会をつとめ,ICA調査委員会委員長ソニア・ノヴコビッチ氏とILOトルコのエズカン氏が開会のあいさつを行った。続いてユルゲン・シュベットマン氏(前ILO協同組合部長,ILOコープアフリカ・プロジェクト代表)は「協同組合と労働の世界の未来」と題する基調報告を行った。会議では以下のテーマの下で同時並行のセッションが行われた。

  • 協同組合と労働法,労働政策
  • 協同組合と労働組合
  • 協同組合と雇用創出
  • 協同組合と若年雇用,女性の経済的エンパワーメント
  • 協同組合と社会保護,社会対話

③日本からの発信

 日本では協同組合と労働組合の長い協力・提携の歴史があり,現在でも労金,全労済,職域生協,労福協など多くの接点があるが,全体としての連携は弱まっている。これまでの歴史を振り返りながら,各組織や提携の現状を分析し,連帯社会という未来ビジョンに向けてどのような戦略を描くかについて発信することが重要である。今回は栗本が論文「協同組合と労働組合:時折のパートナーから連帯社会の構築へ」を発表した。