海外報告
グローバル社会的経済フォーラム出席と調査報告【山崎由希子】

趣旨・目的

  1. ①グローバル社会的経済フォーラム(Global Social Economy Forum、GSEF)出席
  2. ②GSEF求禮国際フォーラム・iCOOP求禮自然ドリーム・パーク訪問

日 程・訪問地

 2014年11月17日~22日 韓国・ソウル、南原

報 告

①グローバル社会的経済フォーラム出席(11月18日~19日、於:ソウル市庁)


●会議の開かれたソウル新市庁舎内にある新旧市庁舎の模型

 11月18日午前9時に始まった開会式ではFlorence Hui氏(香港政府の総務省政務次官、Under Secretary for Home Affairs of the Hong Kong Special Administrative Region Government)、Ley Hark Park氏(ソウル特別市市議会議長)からフォーラム開催を祝うスピーチがあった。続いて基調講演ではPascal Van Griethuysen(国連社会開発研究所)、Juan Maria Aburto(バスク州政府)、Nancy Neamtan(NPO代表、加ケベック州)、Won Son Park(ソウル市長)、三浦敦(川崎市副市長)、Carlo Dellasega(トレンティーノ協同組合フェデレーション、伊)、Sergio Arzeni(OECD地域経済雇用開発プログラム)各氏が講演、地方政府と市民社会組織の連携の実践例や重要性について述べた。

 午後はテーマ別に分科会が開催され、筆者はSocial Economy and Sharing Economyセッションに参加した。Gye Yol Leen(ソウル市社会革新課)、アシダテサヤカ(東山アーティスツ・プレイスメントサービス)、Jae Kyo Seo (Hankyoreh Economic Research Institute)の3氏が報告、Hyun Sook Kang (Creative Commons Korea)、秋葉武(立命館大学)の2氏が討論。特にソウル市の報告が興味深かった。(おそらくはソウルへの人口集中による社会インフラ不足の問題に起因する都市問題[住宅不足、駐車場不足など]への対策として)「共有経済」をキーワードとしてさまざまな施策を行っている。カーシェアリングといったものだけでなく、家庭用工具や子供服・本・スーツ(若い失業者の就職活動用)のシェアリングもある。また情報の共有として個人による旅行の経験や専門知識を共有できるサイトや同業種のアルバイトが知識を共有するサイトを支援。また3月から課長レベルの起案文書をパブリックにオープンしフィードバックを受け付けているとのこと。

 次にLocal Sustainable Development and Fair Tradeセッションに参加、Shay Cullen (Preda Foundation)とHyuk Sang Sohn (Kyung Hee University)の各氏による報告を聞いた。Cullen氏は神父としてフィリピンへ赴き、子どもたちの悲惨な状況(教育を受けられないのはもとより、人身売買が現在でも行われている)に対し活動を行ううちにフェアトレード事業に携わるようになった。この事業では生産者に公正な賃金を払うだけでなく、利益をシェアするのがポイントである。これから得られる利益により子どもを保護するホームを作ったり教育を行ったりしているとのこと。「地域の持続可能な発展」というタイトルに惹かれて参加したが、国・地域が違えば困難な課題の質も非常に異なることを感じた。

 19日午前はSocial Economy in Theory and Practiceと題するセッションに参加、Jongick Jang (Hanshin University)他4組による報告を聞く。Jang教授の報告は韓国の市民社会と国家の関係について歴史的な経緯にも触れつつ、現在は社会的経済に関する権限は中央政府から地方政府へ移譲されつつあり、市民組織と地方自治体のパートナー関係が強化されているとのことで勉強になった。

 午後はLocal Government and Social Economyというセッションに参加、スペイン、香港、韓国、台湾、カナダ、英国の行政担当者の議論を聞いた。特にスペイン(バスク地方)と韓国の協同組合設立を支援する法制度の先進性が印象的だった。その後閉会式でGSEF憲章が採択され、今年の会議は幕を閉じた。次回の会合は2016年にモントリオールで開催されるとのこと。


●グローバル社会的経済(GSEF)憲章採択後の記念撮影の様子

②iCOOP求禮国際フォーラム・求禮自然ドリーム・パーク訪問(11月20日~21日)


●求禮自然ドリーム・パーク内にある即席麺製造工場の外観

 20日の午前中にソウルから南原へ特急で移動、午後はiCOOP求禮自然ドリーム・パーク内にある即席麺製造工場を見学した後、会議室で開催された国際フォーラムに参加した。フォーラムではアンネ・サンタマキ(国際協同組合同盟(ICA)理事、フィンランド生協連(SOK)国際担当役員)とKim Hyungmi (iCOOP 協同組合研究所所長)の各氏が講演、Juan Jose Martin Lopz(Mondragon Co-operative College)、Seo Gidong(求禮郡知事)、Matt Noyes(明治大学)、Chang Jongik (Hansin University)氏らがコメントを述べ、最後にパネルディスカッションが行われた。非常に好調に思われるフィンランドの生協も90年代には不活発な組合員の掘り起しを草の根レベルで地道に行ったという話は印象に残った。

 21日は南原生協センターを訪問し、組合員によるこれまでの活動について説明を受けたり、店舗を視察(買い物も)した。南原生協センターは2011年6月にオープンした(インストアベーカリーもある)店舗とカフェや組合員活動スペース(宿泊施設もある)の入った施設である。1400名余りの組合員がおり、95%が女性、30代から40代の年齢層が中心という。南原市は経済の30%が農業であり、住民の収入はそれほど高くないとのことであるが、組合員は中間層からやや高収入の層が多いそう。組合員の平均的な購入額は月あたり200~210米ドルとのことで、かなり高い印象を受けた。カフェにはフルタイムのスタッフはおらず、活動もかなりの部分を「アクティブ・メンバー」と呼ばれる組合員ボランティアが担っているそうである。私たちが施設を訪問した際もいくつものグループが食の安全に関する勉強会を開いていた。

グローバル社会的経済フォーラムについては、他の出席者の報告も掲載予定です。

ご期待ください!