研究活動

常設研究会 ― 生協共済研究会(第19期) 第1回報告 ―

○ 開催日時
2024年5月20日(月)15:00~17:30
○ 開催会場
プラザエフ5階 会議室(オンライン併用)
○ 参 加 者
46名(委員12名、オブザーバー27名、事務局・講師7名)

テーマ

  1. 研究報告「協共済のガバナンスを考える~協同組合論とガバナンス論からの分析」
    報告者:栗本 昭氏(日本協同組合連携機構 特別研究員)
  2. 研究報告「生命保険会社のコーポレートガバナンス~健全性規制との関係」
    報告者:植村 信保氏(福岡大学 商学部 教授)
  3. 事務局報告「2023年度活動報告および2024年度活動計画について」
    (『生協総研レポート』の発行について)

概要

1. 研究報告「生協共済のガバナンスを考える~協同組合論とガバナンス論からの分析」

 栗本委員より、「生協共済のガバナンスの特質とは何か」をテーマに報告を行った。

 最初に「協同組合論の系譜」として、ICA等による協同組合の定義、生協共済の3つの主要組織(こくみん共済co-op、全国生協連、コープ共済連)の背景や特徴を概観した。「ガバナンス論の系譜」として、エージェンシー理論、スチュワードシップ理論、ステークホルダーモデルについて概説したうえで、大規模協同組合におけるガバナンスの要素としては代表制、経営の専門性、組合員の声があると説明した。

 「協同組合のガバナンス」について、役員の選出方法の特徴や協同組合における過去のガバナンス欠如の事例について触れた。最後に「生協共済のガバナンスの特質」として、連合会組織であり、理事は主に単協の役員によって構成されること等、「こくみん共済co-op、コープ共済連のガバナンス構造」について説明した。

2.研究報告「生命保険会社のコーポレートガバナンス~健全性規制との関係」

 植村氏からは「生命保険会社のコーポレートガバナンス~健全性規制との関係」について報告した。はじめに「経営破綻とコーポレートガバナンス」として、2000年前後に中堅生保が経営破綻した背景としてコーポレートガバナンスの欠如があったことについて説明した。

 「生命保険会社に固有のガバナンス構造」として株主がいない、債権者の多くが経営状態に関心が低い保険契約者である、特有の経営構造が外部から理解しにくい点にふれたうえで、「生命保険会社に求められるガバナンス」として、エージェンシー問題の軽減や健全性や経営の効率性のバランスが重要であると述べた。特に株式会社に移行した生命保険会社が株主還元に年間1千億円~2千億円の利益を配分している一方で、契約者配当が数百億円に留まっていることについて問題提起した。そのうえで「生命保険会社のガバナンスの現状」に関するケーススタディとして株式会社と相互会社にインタビューした結果として、株式会社は株主への意識が強いこと、相互会社は契約者の経営モニタリング機能が弱いこと等が報告された。

 最後に「規制によるガバナンスの強化」として金融庁が2025年度から導入予定の新しいソルベンシー規制(ESRの確保、内部管理と監督上の検証、情報開示による市場規律)とその課題について提起した。

3.「2023年度活動報告および2024年度活動計画について」

 事務局より『生協総研レポート』の発行について計画概要を報告した。