研究活動

常設研究会 ― 生協共済研究会(第13期) 第3回報告 ―

○ 開催日時
2018年8月27日(月)15:00~17:25
○ 開催会場
プラザエフ5階 会議室
○ 参加者
28名(委員10名、報告者1名、オブザーバー13名、事務局4名)
テーマ
報告者:
小川浩昭(西南学院大学)
テーマ:
「保険学における天動説」
概要

1.報告「保険学における天動説」

  • 「保険学における天動説」というテーマで西南学院大学の小川浩昭教授が報告を行いました。
    1. ①問題意識として、わが国では、保険を相互扶助制度と捉える「保険相互扶助制度論」が有力で、保険業界、監督官庁、保険学会のいずれにおいても共通する主張となっている。一方、IT技術の高度化と活用によってP2P保険など新たな保険の中に「相互性」を主張するものが現れている。これらの新たな保険の動向も視野に入れながら、保険の相互扶助性について考察する、と冒頭に説明しました。
    2. ②保険の本質、保険史、保険団体等の先行研究等を基に、保険の相互扶助性について考察し、相互組織の保険が近代保険の誕生と結びついていること、保険者と加入者の結合(関係)は保険団体の目的に裏付けられる、といった主張があることを紹介しました。
    3. ③近代保険における保険料と保険金の流れ、保険者と加入者の関係を考察し、保険の本質は相互扶助ではなく資本主義的性質(個人主義・自由主義・合理主義)にあることを説明した。「保険相互扶助制度論」は、<多数の加入者×少額の保険料>の貨幣を<少数の保険事故遭遇者×多額の保険金>に転換している現象を「見たままに描写」したもので、いわば保険における「天動説」と言え、真理は保険相互扶助説とは逆だ、と表現しました。
    4. ④次に、社会保険や相互会社・協同組合による保険の相互扶助性について考察を行い、前払い確定保険料方式や成員自治の現実から相互会社の保険に相互性はないと結論付けました。
    5. ⑤最後にInsurTech時代の保険の相互扶助性としてP2P保険における人と人とのつながりについて考察し、ブロックチェーンの展開も含めて今後注視していく必要性が話されました。
  • 報告を受けた討議では「保険の相互扶助性とは個々の保険の性質の一つに過ぎない」「保険はそれを提供する共同体、市場、国家等の経済組織により性質が異なる」「協同組合が行う共済は共同体、市場、国家の中間領域に存在する」「共済団体等における相互扶助の概念の例」「相互会社に置ける成員自治関係の希薄化」「日常的な高齢者の見守り等の相互扶助の行為の例」等が話されました。

2.その他

  • 事務局より2019年7月に発行予定の総研レポートの企画と進め方、12月に香港で開催されるAO Aセミナーの視察計画、各団体における学習会や交流会の開催予定について報告を行いました。
  • コープ共済連のCO・OP共済全国交流集会の視察を行った根本委員、吉田委員から感想が報告されました。

3.次回研究会 2018年10月22日 午後3時~5時30分
 中林真理子氏(明治大学)より「生協共済団体のガバナンス」について報告いただく。