研究活動

常設研究会 ― 生協共済研究会(第11期) 第6回報告 ―

○ 開催日時
2017年2月28日(火) 15:00~18:00
○ 開催会場
プラザエフ5階 会議室
○ 参加者
25名 (委員10名、オブザーバー8名、事務局7名)
テーマ
報告者:
宮正一洋(神奈川県民共済生協 共済研究室長)
テーマ:
「イギリスの友愛組合における相互扶助」
報告者:
岡田 太(日本大学)
テーマ:
「保険におけるミューチュアル、共済の相互扶助」
協 議:
事務局
テーマ:
「生協共済研究会2016年度活動のまとめ、2017年度活動計画について」
概要

1.報告①「イギリスの友愛組合における相互扶助」

 宮正一洋氏(神奈川県民共済生協)から、イギリスの友愛組合の近況と「ヘルスケア事業」について解説をいただいた。

 友愛組合が所属するAFM(金融相互扶助組織協会)とBHCA(英国ヘルスケア協会)の合併が2017年1月に発効となった。昨今、欧州ではこのような合併が増えているがそのきっかけの一つに2007~2008の金融危機がある。金融危機後に監督規制当局はコーポレートガバナンスや健全性強化の方針を打ち出し、それらの規制は(比較的小規模である)相互扶助組織にとって重荷となっている。しかし一方でイギリスでは資本主義の行き過ぎに対し相互扶助組織に対する社会からの見直し気運が高まってもいるといった状況について詳しく説明いただいた。またブレクジット投票の際の動向からみられる地域ごと特性など、現地法人にご勤務されていた際の知見も踏まえた事例紹介は大変興味深く、イギリスの相互扶助組織を知る良い機会となった。

 英国の「ヘルスケア」事業者が取り扱う商品の内容について、英国の保険制度(税方式で運営される公的医療保険制度があるが、例えば長時間の順番待ちに見られる制度の問題点を補うべく私的医療保険の需要が少なからずある等)も含め紹介いただいた。

2.報告②「保険におけるミューチュアル、共済の相互扶助」

 岡田太座長(日本大学商学部)より保険の相互扶助性をめぐる議論と、共済概念の再検討について、先生の試論を報告をいただいた。

 これまでの保険学説では、保険の相互扶助生や相互性を否定的に捉えるのが通説であった。相互扶助を加入者間の損失分担の仕組みとして捉えることによって、保険は「自分のための加入が他人のためにもなる」という意味において相互扶助性がある、と考えられるのではないか。

 共済概念については、ペストフの福祉トライアングルモデルを生活保障システムに援用し、経済組織(共同体、市場、政府、中間組織)の中での役割を考察した。経済システムの変化の中で、従来の自助、互助、公助の役割分担が変化しており、生活保障システムでは、保険と違った関係で共済の役割が位置づけられるのではないか。

 共済陣営が主張する「保険には無い相互扶助性」というものが、世間一般に受け入れられるためにはその相違点をはっきりする必要があるが、保険と共済の同質化が言われて久しく、その相違点を見出すための試みとして有意義な内容であった。

3.協議「生協共済研究会2016年度活動のまとめ、2017年度活動計画について」

 2017年度は、生協総研の全国研究集会のテーマを共済関連とする予定であり、事務局より全国研究集会の開催趣旨と想定スケジュール、加えて当日配布する生活協同組合研究誌9月号の構成について説明の後、委員の役割分担について協議を行った。また、2017年度の第5回研究会を公開研究会とし開催する案についても説明が行われた。