常設研究会 ― 協同組合法制度研究会 第40回報告 ―
- ○ 開催日時
- 2019年7月29日(月)17:00~19:00
- ○ 開催会場
- プラザエフ5階会議室
- ○ 参加者
- 21名 (講師1名、委員5名、事務局2名、オブザーバー13名)
テーマ
- 報 告:
- 堀田 力氏(公益財団法人さわやか福祉財団 会長)
- テーマ:
- 「新公益法人制度の成果と制度改正への提言」
概要
堀田力氏(公益財団法人さわやか福祉財団 会長)より、「新公益法人制度の成果と制度改正への提言」について報告いただいた。
報告の要旨
1.10年間の運用からみた新公益法人制度などの主な課題について
10年間の運用からみた新公益法人制度などの主な課題の中で、協同組合にも参考になる課題としては「制度面での障害」が挙げられる。そもそも現在の法律が「性悪説」に立って制度設計されている。そのため、日常の事務手続きや行政庁への報告・届出などの負担や行政の立ち入り検査対応の負担が重い。旧財閥系公益法人のように唯唯諾諾と行政指導に従うだけではこの障害の是正にはつながらず、「おかしい」と感じる指導・監督に対しては協同して異を唱えることも時に必要である。
2.協同組合と公益法人・NPOの相違
資本・営利のルールに抗して弱者救済を図るという意味では協同組合と公益法人・NPOは同じ立場だが、協同組合があくまで資本・営利のルールの枠内で協同の力で救済を図るのに対して、公益法人やNPOは同ルールにはとらわれず寄付や助成、ボランティアの力を借りて公益を実現しようとするものである。
共同購入の例などをみると、商品を分け合う行為が組合員どうしの共感を生み、つながりを広げている。協同組合の「本業」にとどまらず、地域の社会的共同体(地域コミュニティ)強化を追求するという点では、公益法人やNPOと相通じるものがある。
3.生協(協同組合)への期待
地域社会づくりを進める方法は3つ考えられる。第一に、専門の担当部門(農協婦人部など)を設ける方法だが、本業(事業部門)との関係が課題になる。第二に、別法人をつくって地域社会づくりにあたる方法もある。別法人としては一般社団法人やNPOが考えられる。公益法人もない訳ではないが、現状の制度的な制約を考えるとやめた方がよい。第三に、外部との連携を活用する方法がある。改定された介護保険制度では、地域支援事業の実施主体である市町村の生活支援体制整備のために生活支援コーディネーターと協議体(第1層・第2層)が位置付けられている。この協議体への生協への参画は今のところ少ないようだが、地域でのたすけあい活動推進のために今後はぜひ生協も協力して欲しい。
4.質疑応答
中島智人委員(生協総研理事)より、特別法による公益法人とNPOの制度統合の可能性、市民主体の公益法人新設促進に関して堀田氏の助言を求めるコメントをいただいた他、既得権益と調整を図りつつ基本法を実現する工夫(韓国の例)、性善説に立つNPO法が成立した要因と首相官邸の政治力活用、生協の協議体への参加が進まない理由などについて質問があり、堀田氏にそれぞれ回答いただいた。