常設研究会 ― 協同組合法制度研究会 第38回報告 ―
- ○ 開催日時
- 2019年3月25日(月)17:00~19:00
- ○ 開催会場
- プラザエフ5階 会議室
- ○ 参加者
- 14名(委員4名、オブザーバー9名、事務局1名)
テーマ
- 報 告:
- 栗本昭 委員(法政大学 連帯社会インスティテュート教授)
- テーマ:
- 「ポルトガルの憲法と協同組合法」
概要
栗本昭委員(法政大学 連帯社会インスティテュート教授)より、「ポルトガルの憲法と協同組合法」について報告いただいた。
報告の要旨
1.ポルトガル協同組合法を学ぶ意義
ポルトガルの協同組合法を学ぶ意義は3つある。第1に、協同組合法、社会的経済法という法制度とともに、協同組合のサテライトアカウント(国連、政府のGDPなどの経済生産量の計測とは別に、それと密接な関係を持って特定分野の経済活動を計測する勘定のこと)を持っている。第2に、憲法上、協同組合についての規定が豊富であること。第3に、協同組合法にICAの7原則が規定されていること。これらの点で、わが国の協同組合法制度の在り方を検討するうえで参考になる。
2.法制度の制定、整備の歩み
1888~1974年までは商法の下で協同組合が規定されていたが、1974年のカーネーション革命による民主化ののち制定された憲法に協同組合が規定された。1980年に協同組合法が制定され、1996年には新しい協同組合法が制定された。1998年には社会連帯協同組合法も制定されている。
3.協同組合法の特徴
- 協同組合の定義では、「自由に設立され、変動する出資金と構成員を持つ自治的な集合体」「その設立と活動においてICAによって採択された・・次の協同組合原則に従う」となっている。
- 事業については、「いかなる種類の事業にも携わることができる」とし、「消費、販売、農業、信用、住宅・建設」など12部門を規定し、多目的協同組合も認められている。また「組合員数、出資金額、事業高に上限はない」「第三者との取引(員外利用)が可能」などの規定もある。
- 財務では、「出資金、会費、投資証券」「準備金、剰余金」などが規定されている。準備金は、法定準備金、教育・訓練事業積立金、定款による基金などがあるが、前2者は強制的で分割不可能である。協同組合の税制上の優遇措置は大幅に削減されたが、農業、文化、消費住宅、社会連帯の協同組合は法人税が免税となっている。
4.社会連帯協同組合法および社会的経済基本法
1998年の社会連帯協同組合法は、社会的弱者(子供、若者、社会的困難を抱える人、老人など)の支援、家族やコミュニティの支援、それらへの教育、訓練などの支援を主な活動分野としている。利用者が組合員となる。また組合に財やサービスを提供するものはボランティア組合員となる。
2013年に制定された社会的経済基本法は、社会的経済の団体の活動について「直接的であれ構成員・利用者および受益者の利益の追求を通じてであれ、社会的に意義のあるものである場合、社会の一般的利益の追求を目的とする」と定義している。