常設研究会 ― 協同組合法制度研究会 第37回報告 ―
- ○ 開催日時
- 2019年1月28日(月)17:00~19:00
- ○ 開催会場
- プラザエフ5階 会議室
- ○ 参加者
- 20名(委員5名、報告者1名、オブザーバー13名、事務局1名)
テーマ
- 報 告:
- 加瀬 和俊氏(帝京大学経済学部 教授)
- テーマ:
- 「『水産政策の改革』と漁業権の『開放』-漁協の変質と生業的漁業の行方」
概要
加瀬和俊氏(帝京大学経済学部 教授)より、「『水産政策の改革』と漁業権の『開放』」と題して、今般の漁業法改訂について、その理由(目的)、主な改訂事項、問題点などについて、報告いただいた。
報告の要旨
1.はじめに
改正漁業法は、12月8日参院本会議で賛成多数で可決され、成立した。公布から2年以内に施行。漁業権制度を含む抜本的な見直しは約70年ぶりとなる。この改訂後、具体的にどのようになるのは未定だが、①何がどう変わったのか、②水産行政はどう変わるのか、③漁協はどう変わるのか、などについて、考えを述べたい。
2.現行の漁場利用制度はどうなっているか
現在の、漁場の利用権は、①沖合・遠洋漁業(イワシ、サンマ、サバ、マグロ、カツオなど)は許可制度、②沿岸漁業(海藻、貝、定置網、養殖のブリ、マグロなど)は漁業権制度、によって漁業者に配分されている。その資源管理の方法としては、①年間の採捕量の上限を定める漁獲可能量(TAC)制度などの公的な管理と、②沿岸漁業での漁業者による自主的な資源管理が行われている。
3.法改訂の内容と疑問点
- (1)改訂の目的
今回の改訂は、水産業の「成長産業化」、漁業の競争力強化を目指すことを掲げ、漁業権の制度を見直し、民間の大規模経営の新規参入を促す一方、資源保護管理の規制緩和を進める内容となっている。 - (2)主な改訂内容
①沿岸漁場での区画漁業権や定置漁業権は、地元の漁協や漁業者を優先する規定が廃止され、民間企業が漁業権を得て参入する道を開く。漁場を「適切かつ有効に活用している」場合に限って漁協などが漁業権を継続できるとしているが、基準があいまいだ。
②資源管理方式は、漁獲可能量(TAC)を各漁船にIQ(個別漁獲割当量)として配分する。
- (3)漁協と地元組合員はどうなるか?
漁協はこれまでの沿岸漁場全体の管理者から部分的管理者となり、赤潮対策、薬剤散布の規制などを含めて、従来漁協が中心となって担ってきた統一的な漁場管理が不在となる恐れがある。