常設研究会 ― 協同組合法制度研究会 第36回報告 ―
- ○ 開催日時
- 2018年11月19日(月)17:00~19:00
- ○ 開催会場
- プラザエフ5階 会議室
- ○ 参加者
- 15名(委員6名、報告者1名、オブザーバー7名、事務局1名)
テーマ
- 報 告:
- 多木 誠一郎氏(小樽商科大学商学部 教授)
- テーマ:
- 「平成27年農業協同組合法改正と残された課題について」
概要
多木誠一郎氏(小樽商科大学商学部 教授)より、「平成27年農業協同組合法改正と残された課題について」と題して、法改正の中で論点となっている事項を中心に、法改正の基本的な考え方と改正内容が整合しているかどうか、という視点で報告いただいた。
報告の要旨
1.はじめに
法改正の総論(改正の基本的な考え方)と、各論(実際の改正内容)とが一致しているかどうか、という点を中心にお話ししたい。また、次の法改正に持ち越された事項についての考え、日本の協同組合法の在り方についても自身の考えを述べたい。
2.法改正を支える基本的な考え方
法改正がどのような考え方に基づいて行われたか、第一には法改正の提案趣旨(農業の成長産業化を図る)に示されている、第二に協同組合法理論によっているかどうか、第三には規制改革会議が主張してきた株式会社との形式的な平等(イコールフッティング)がどうなったか、第四には農協系統と行政庁との関係は提言されたように改善されたか、第五には近時の企業法改正の考え方がどのように反映されたか、からみていく。
3.法改正の内容と疑問点
①組合の事業運営原則の明確化、②理事の積極的資格、③組合員の自主的組織、④組織変更、⑤中央会の廃止と中央会監査の廃止、の5点について、個別の改正内容とその結果が、法改正の考え方と矛盾がある。例えば、①の事業運営原則にかかる改正で、高い収益性の実現と最大の奉仕を目的とすることは素直に考えると両立しない、このような問題点が生じるにもかかわらず、高い収益性の実現という文言を改正法に入れる必要性があるかは疑問である。
4.次の法改正に持ち越された事項
①准組合員の組合事業利用に関する規制、②員外利用の扱い、の2点について、それをめぐる議論を紹介する。そして次の改正では、①改正の基本的な考え方(理念)と平仄が取れた改正となること、②行政と農協組織の関係の改めること、③イコールフッティング論についての議論や考え方を整理すること、が重要である。
結論として、農協系統では協同組合法理論の構築をリードしたり、理論に基づいて立法要求をしたりしてきた経緯はなく、なし崩し的に法改正を要求してきたのではないか。現在の農協法は制度的疲労が生じていることは否めず、規制改革会議からの提言に関わりなく、相応の法改正は必要である。改正にあたっては、理念と法律、そして実際が一致している状態が望ましい。